第9回研究会
(オンライン)

【テーマ】
アドラー心理学の概要と臨床への適用
2023年5月25日(木)
19:00~21:00

テーマ

アドラー心理学の概要と臨床への適用
【報告者】田中 禎先生(ただしメンタルクリニック 院長)

開催概要

●日程・開催時間
2023年5月25日(木) 19:00~21:00
※後半30分間は意見交換

●形式
オンライン開催 Zoom(※)で行います
※Zoom(ズーム)とは無料で簡単に使えるWebサービスです。事前にアプリのインストールが必要です。
PC、タブレット端末、スマートフォンでご視聴いただけます。ご視聴にはインターネット環境が必要です。
参加に伴う通信料は参加者様負担となります。

●事務局
条件反射制御法学会事務局

受講費について

(参加費用)
●会員
1,000円
●非会員
3,000円

(2023年度会員年会費)
●会員の方
2023年度年会費未払いの方は、お申込み時に年会費を併せてお支払いください。
会員参加費に加えて、2023年度年会費 5,000円

●非会員だが2023年度の会員になって参加する方
会員参加費に加えて、2023年度年会費 5,000円
※会員資格発生後は、学会誌の最新号と会員向けメールマガジンをお送りします。

(1)参加費はお支払い後、参加者様都合の場合、返金はできかねますので、ご了承ください。
(2)ご入金確認後、研究会開催3日前までには、お申し込み時のアドレスへ参加用URLを送信します。

お支払い方法
●郵便振替
自動返信メールの記載を必ずご確認ください。

●クレジットカード
申し込みフォームより必要事項を入力しお支払いください。
※決済プラットフォームはStripe(ストライプ)を使用しています。

申込み方法について

上記タブ「申し込みフォーム」からお申込みください。
※申込完了時に申し込みフォームに記載された「連絡先メールアドレス」に自動配信されます。
自動配信メールが届かない場合は、受付が完了していない場合がございます。問い合わせ先のアドレスに照会をお願いします。
※HP申し込みフォーム以外の郵送・電話・E-mail等による申し込みは受理できませんのでご注意ください。

募集期間

受付期間を終了いたしました。
・郵便振替でお支払いの方:2023年5月15日(月)まで
・クレジットカード決済の方:2023年5月23日(火)まで

注意事項

PCの問題、WEB接続環境が整っていない等の接続に関するサポートは行っていませんので、ご了承ください。

研究会についての問い合わせ先

下総精神医療センター  担当:寺内 〈受付時間:平日9:00~15:00〉
〒266-0007 千葉県千葉市緑区辺田町578番地
E-mail:crct.mugen@gmail.com 電話:043-291-1221(内線8328)

研究会当日の緊急連絡先

NPO法人アパリ 担当:尾田
電話:090-3047-1573

参加申込受付を終了しました。
たくさんのお申し込み、ありがとうございました。

第9回研究会「アドラー心理学の概要と臨床への適用」の紹介

このオンライン研究会はさまざまな分野の方を招いてお話をいただいている。理由は、当会の目的がヒトの本当の行動メカニズムに基づいて精神科領域の技法や対応体系である司法制度の効果を向上させる研究を行うことであり、そのためにはヒトに関する知識を増やすべきであると考えるからである。さまざまな領域の方のご報告を基にして研究会を開催しており、今後も同じように継続する。

その中で焦点の1つは心理療法であり、講師は古くからある心理療法に造詣の深い方々である。そのように計画したのは複数の心理療法がそれぞれでヒトが行動するメカニズムを想定しており、それらの差異は、名称に限られておらず、作用にまで至っており、現在の心理療法の多くは誤っているという結論を避けられないからである。この考えに至った経緯に関しては、第8回研究会の紹介に詳述しているのでご一読願いたい。

当会が研究の対象とする条件反射制御法の理論は、進化に基づいて整理されており、その技法は高い効果をもち、焦点とする部分が明確であり、他の援助的なはたらきかけと役割を分担できる。また、その理論は、援助的なはたらきかけと刑事司法体系の役割を明らかにして、実効的な連携体系を構築する基にもなるものである。ヒトという生物種に対応する各はたらきかけはそのような整理の一要素になるはずである。また、そのような整理ができないはたらきかけや理論は間違っていると考える。

その考えと一部合致し、他方やや摩擦するが、第8回研究会において司会が「条件反射制御法は治療モデル、ゲシュタルト療法は成長モデル」と表現したことに一定の納得を感じた。心理療法の一部を、一定の健康度を保ったヒトがよりよい人生を送るための思想であると把握すればよいのかとも考えながら、それでも心理療法を提供する側の方たちにはやはりヒトの行動を進化の観点から把握していただきたいとも考える。

このような考えをもちながら、今回の第9回研究会において田中禎先生からアドラー心理学に関してお話をいただく。日本アドラー心理学会事務局に私からこの研究会でのお話を依頼したところ、お引き受けくださった方が田中先生で、数年前に条件反射制御法研修会にご参加くださっていたのである。田中先生はすでに抄録の中で、アドラー心理学を「いわゆる真理の追究ではなく、ある一つの解釈の仕方に過ぎない。」と表現され、また、「このようなアドラー心理学の概要と臨床現場での実際についてご紹介したい。」ともお書きくださった。

真理を追求しないままで、しかし、抄録の最後にもあるようにご執筆も多く、臨床的な効果も把握されていらっしゃり、その調整はどうなっているのだろうと考えながら、また、少しは条件反射制御法も使ってくださっているのだろうかとも思いながら、第9回研究会でのお話を楽しみにしている。

2023年4月
条件反射制御法学会
理事長 平井愼二

テーマ:アドラー心理学の概要と臨床への適用

報告者:田中 禎(ただしメンタルクリニック 院長)

アドラー心理学は、臨床現場における「人間が健康的に生きていくこと」と「他者を援助し、協力的に暮らしていくこと」などをテーマに発展してきた臨床心理学の一つである。

その理論は、基本前提(basic assumptions)とよばれる公理系のうえに構築されている。基本前提は、経験から帰納された法則ではなく、なんらかの方法で正当性が証明できるような定理でもない。アドラー心理学の諸原理を統一的に説明するために要請された理論的な仮説である。つまり、仮説検証的な自然科学的理論ではなく、仮想のシステムである。いわゆる真理の追究ではなく、ある一つの解釈の仕方に過ぎない。

アドラー心理学の理論は、「全体論 Holism(心身一元論の立場)」 「目的論 Teleology」「仮想論 Fictionalism」 「社会統合論  Social Embeddness」「個人の主体性 Creativity」などの基本前提から構築されている。

アドラー心理学の思想の根幹としては、「共同体感覚」がある。「共同体感覚」とは、他者への関心と貢献の感覚を指す。また、思想があるという意味で、アドラー心理学は科学そのものではないという立場をとる。

アドラー心理学の治療の特徴としては、「病気を治す」ことを目的にしておらず、たとえ病気であっても、「心理的に健康な暮らし方を身につける」ということを目的にしている。「心理的に健康な暮らし方」とは、「神経症的な生き方から脱却すること」と「他者と協力的に暮らすこと」(共同体感覚の育成)を意味している。

アドラー心理学の治療技法として、現実的に達成可能な治療目標の一致をとること(目標の一致)、クライエントの言うことの主として目的について推量をして、それをクライエントに確認をとること(解釈と推量)、クライエント自身が自分の責任で解決しなければならない課題と、クライエントには責任がなく介入する権利がない課題とを区別すること(課題の分離)、目標達成のためのさまざまなアイディアを提供すること(代替案の提示)、「勇気づけ」「ライフスタイル診断」などがある。

アドラー心理学自体が、ヴィクトール・フランクルのロゴセラピーや、アルバート・エリスの論理情動療法、アーロン・ベックの認知療法、ウィリアム・グラッサーの現実療法、NLP(神経言語プラミング)、カール・ロジャース、アブラハム・マズローなどにも影響を与えたといわれているが、逆に治療技法としては、アドラー心理学の理論と思想の文脈において、認知行動療法やナラティブ・セラピーやミルトン・エリクソンの系統のさまざまな治療技法を採用したり、近年、日本においては、サイコドラマに古武術的技法を取り入れたボディ・ワークなども行われている。

アドラー心理学は、多職種の支援者、患者、家族等が難解な専門用語を用いずに、比較的、平易な言葉を共有し、一緒に学びながら、それぞれが「神経症的な生き方から脱却すること」と「他者と協力的に暮らすこと」について学べる構造を持っている。

実際の診療現場においても、「(医師も患者も)健康な暮らし方を身につける」ことを念頭におきながら、横の関係を意識して(たての関係に陥らないように)、患者と話し合い、目標の一致をとり、協働的に治療をすすめていく。たての関係とは、どちらが上で・どちらが下か、正しいか・間違っているか、勝つか・負けるか、優れているか・劣っているか、等を問題にする競合的な関係をさす。横の関係とは、お互いにかけがえのない存在であることを認め合い、お互いの存在を大切にする相互尊敬・相互信頼にもとづく関係をさす。

薬物療法については、アドラー心理学の文脈では、患者が「健康的に生きていく」際に必要な社会的資源の一つとして位置づけている。そして、話し合いを重視するため、患者が理性的に考えたり、治療者と少しでも冷静に話し合うことが妨げられないような薬物の選択を好む傾向にある。

本講演では、このようなアドラー心理学の概要と臨床現場での実際についてご紹介したい。

【参考文献】

  • A・アドラー著 岸見一郎訳 野田俊作監訳:個人心理学講義 生きることの科学 一光社
  • R・ドライカース著 宮野栄訳 野田俊作監訳:アドラー心理学の基礎 一光社
  • A・アドラー著 岸見一郎訳:人はなぜ神経症になるのか 春秋社
  • アンリ・エレンベルガー著 木村 敏,中井久夫監訳:「第八章 アルフレート・アドラーと個人心理学」.無意識の発見下 弘文堂
  • A・アドラー著 桜田直美訳:生きるために大切なこと 方丈社
  • 野田俊作:「アドラー フィクションとしての心理学」大航海 2004 No.51 精神分析の21世紀 新書館、2004,p92-98
  • 中島弘徳 梅崎一郎:「アドラー派のサイコドラマに古武術的技法を取り入れたワークの効果について」心身医学 Vol.59 No.3 2019年4月
  • 田中 禎:「アドラー心理学の基本前提(理論編)」(日本アルコール関連問題学会雑誌 第21巻第1号)
  • 田中 禎:「依存臨床におけるアドラー心理学(応用編)」(日本アルコール関連問題学会雑誌 第21巻第1号)
  • 田中 禎:「精神科診療における初診時の向こう側―治療者の関心―」(Frontiers in Alcoholism Vol.6 No.2 2018)
  • 田中 禎:「患者心理に配慮したうつ病治療の終結」(臨床精神薬理 Vol.22 2019)
  • 田中 禎:「睡眠薬治療のパラダイムシフト~実臨床におけるレンボレキサントの意義~」(西宮市医師会医学雑誌 27号 2022)