第8回研究会
(オンライン)

【テーマ】
ゲシュタルト療法の理論と技法
2023年3月27日(月) 
19:00~21:00

テーマ

ゲシュタルト療法の理論と技法
【報告者】室城隆之先生

開催概要

●日程・開催時間
2023年3月27日(月) 19:00~21:00
※後半30分間は意見交換

●形式
オンライン開催 Zoom(※)で行います
※Zoom(ズーム)とは無料で簡単に使えるWebサービスです。事前にアプリのインストールが必要です。
PC、タブレット端末、スマートフォンでご視聴いただけます。ご視聴にはインターネット環境が必要です。
参加に伴う通信料は参加者様負担となります。

●事務局
条件反射制御法学会事務局

受講費について

(参加費用)
●会員
1,000円
●非会員
3,000円

(2022年度会員年会費)
●会員の方
2022年度年会費未払いの方は、お申込み時に年会費を併せてお支払いください。
会員参加費に加えて、2022年度年会費 5,000円

●非会員だが2022年度の会員になって参加する方
会員参加費に加えて、2022年度年会費 5,000円
※会員資格発生後は、学会誌の最新号と会員向けメールマガジンをお送りします。

(1)参加費はお支払い後、参加者様都合の場合、返金はできかねますので、ご了承ください。
(2)ご入金確認後、研究会開催3日前までには、お申し込み時のアドレスへ参加用URLを送信します。

お支払い方法
●郵便振替
自動返信メールの記載を必ずご確認ください。

●クレジットカード
申し込みフォームより必要事項を入力しお支払いください。
※決済プラットフォームはStripe(ストライプ)を使用しています。

申込み方法について

上記タブ「申し込みフォーム」からお申込みください。
※申込完了時に申し込みフォームに記載された「連絡先メールアドレス」に自動配信されます。
自動配信メールが届かない場合は、受付が完了していない場合がございます。問い合わせ先のアドレスに照会をお願いします。
※HP申し込みフォーム以外の郵送・電話・E-mail等による申し込みは受理できませんのでご注意ください。

募集期間

受付期間を終了いたしました。
・郵便振替でお支払いの方:2023年3月15日(水)まで
・クレジットカード決済の方:2023年3月23日(木)まで

注意事項

PCの問題、WEB接続環境が整っていない等の接続に関するサポートは行っていませんので、ご了承ください。

研究会についての問い合わせ先

下総精神医療センター  担当:寺内 〈受付時間:平日9:00~15:00〉
〒266-0007 千葉県千葉市緑区辺田町578番地
E-mail:crct.mugen@gmail.com 電話:043-291-1221(内線8328)

研究会当日の緊急連絡先

NPO法人アパリ 担当:尾田
電話:090-3047-1573

参加申込受付を終了しました。
たくさんのお申し込み、ありがとうございました。

第8回研究会「ゲシュタルト療法の理論と技法」の紹介

多くの心理療法があることを、私は過去にはあまり抵抗なく受け入れていた。心理療法は不思議なところがあるが、名のあるものはそのように受け継がれてきたのだから、理論があり、効果を生じるのであろうと把握していたように思われる。

私は薬物摂取を反復する者達に1989年から専門的にかかわった。当初は、欲求を消せるなどとは思いもよらず、挑戦もしなかった。しかし、売人の顔をみたら大便をしたくなるという患者の言葉がヒントになり、調査をし、その結果から薬物摂取行動の反復に条件反射が関係していることを知り、欲求を消せると考えた。

条件反射制御法を2006年5月1日に開始した。当初は、試験的に現在の手順の疑似に該当するもののみを行った。驚くほどに強い反応が患者に生じ、しかし、その反応は疑似の反復により急速に低減した。覚醒剤に対する欲求を消せるようになった。なぜ、そのように強い効果が出るのかを考え、また、一旦は欲求が消えたのに退院した後に生じた再乱用の原因を探り、不足した対応を補う調整をした。さらに、その技法の対象を万引きや痴漢等にも拡大して、調整を重ねて、条件反射制御法を展開させた。

その経過で技法に不足した部分を補うための理論として頼りにしたのは進化であった。その進化も、多数派ではなく、獲得形質は遺伝すると主張する少数派により唱えられた進化である。獲得形質は遺伝するという進化に関する学説は、条件反射制御法を開発した当時は極めて少数派であったが、その後、獲得形質は遺伝する証拠を示す報告が増えつつある。おそらく、条件反射制御法はヒトが行動する本当のメカニズムに対応するものである。

条件反射制御法を展開させながら、先人達の知見を患者に見られた反応に照らし合わせて検討し、合理的なものを選択し、補足して、ヒトが行動する本当のメカニズムだと考えたものを別途(こちらを参照)示す。

ここまで記したような経過があり、新たに心理療法に出遭ったとき、あるいは過去から知るものを再度見直すとき、技法だけでなく、その心理療法の基盤理論、つまり、ヒトが行動するメカニズムをどのように想定しているのかに必ず注目するようになった。有名な心理療法をいくつか見比べることで、それぞれの心理療法が想定するヒトが行動するメカニズムが異なることが分かる。この状況は重大である。心理療法が働きかけるのは、ヒトという1種類の生物がもつおそらくは1つの行動メカニズムに生じた逸脱である。いろいろな技法が正当に存在できる理由は、健常な状態からの逸脱に対して、効果を表すメカニズムにおける差異によるという理由、あるいは働きかける逸脱の種類が複数あることに対応するという理由などに限られるはずであり、ヒトが行動するメカニズムが多様であるはずはない。しかし現状は、複数の心理療法はヒトが行動するそれぞれのメカニズムを想定しており、それらの差異は、名称に限られておらず、作用にまで至る。従って、現在の心理療法の多くは誤っているという結論を避けられない。

その誤りによる影響の内、先ず挙げられることは、治療的な場においてはどこまで治るかを左右することである。心理療法の技法が、ヒトが行動する本当のメカニズムに迫るものが、より高い効果を現すのであり、誤った理論に基づき、不足するところを残す心理療法は整理されるべきである。不足するところが不明であれば、他のはたらきかけとの連携ができず、対象者を治せない。

もう一つの大きな影響は、刑事司法体系のあり方を左右することである。精神疾患の症状そのものが違法行為である場合は、刑事司法体系が関わる話になる。規制薬物に対する使用障害や病的窃盗、性嗜好障害の症状は違法行為として発現するので、それらの精神疾患の症状のどの部分をどのような機序で犯罪だとして刑罰を与えるか、あるいは疾病だとして刑罰を与えず、治療的な対応を強制するかあるいは勧奨に留めるかという問題は、ヒトが行動する本当のメカニズムに基づかない誤った理論で検討すれば、正当に解決しないのである。現在の刑事司法体系は、反復傾向のある違法行為をはたらいた者を、刑罰をもって対応することを基本としており、再犯者を多く生んでおり、問題が大きいものである。

その問題の大きい刑事司法体系が存在している責任は、正しいヒトの行動メカニズムを刑事司法体系の専門家が理解できる形で伝えられていない精神医学や心理学の領域で研究や実務にかかわる者達の責任でもある。それらの領域の者は、自分達の主張が刑事司法体系に影響を与えることを意識しながら、言葉を発しなければならないのである。

今回の研究会で講師を務めてくださる室城隆之先生は長年、家庭裁判所調査官を務められた。おそらくは、触法少年に関わった際には、その触法行為に対する刑事司法体系のあり方に関して、また、直接にはかかわらなかったにしても成人が疾病状態ではたらいた違法行為に関しても、刑事司法体系の職員として、治療的な観点からもさまざまなことをお考えになられたと推察する。室城先生が今回の研究会でお話しくださるのはゲシュタルト療法の理論と技法が焦点である。お送りくださった抄録には、ヒトが行動する本当のメカニズムをゲシュタルト療法は探求したものであることが示されており、楽しい研究会になりそうな予感がある。

2023年2月
条件反射制御法学会
理事長 平井愼二

テーマ:ゲシュタルト療法の理論と技法

報告者:室城隆之(江戸川大学 社会学部 人間心理学科長)

ゲシュタルト療法は,1950年代初め,精神科医であるフリッツ・パールズ(Frederick, S. Perls),その妻でゲシュタルト心理学者であったローラ・パールズ(Laura Perls),ポール・グッドマン(Paul Goodman)らによって考案された,実践的な心理療法である。ゲシュタルト療法の特徴は,①実存哲学・現象学に基づいた心理療法であること,②「今ここ」での気づきとコンタクトを中核とした理論体系,③身体との対話,「今ここ」での体験,関係性を重視した技法にある。

1.実存哲学・現象学に基づいた心理療法であること
実存主義は,20世紀にハイデガー,ヤスパース,サルトルらによって主張された哲学である。実存哲学を一言で語るのは難しいが,ゲシュタルト療法の人間観に影響を与えているのは,以下の点である。
1)実存は本質に先立つ
人間は生まれたときは,皆同じで,ただ存在しているだけである。しかし,その後,どうあるべきか,どう生きるべきかを様々に価値づけられ,また自分で自分を価値づける。実存哲学は,人間とは何か,人間とはどうあるべきかといった「本質」よりも,現実に存在しているということ,現実に生きている人間としての「あるがまま」の存在が重要と考える。

2)主体的な選択者としての存在
人間はまず存在(実存)し、自らでいかなる存在になるかを選び、決断することができる。つまり,人生の主体は自分自身であり,どう生きるかは自分次第である。「あるがままの自分」を受け入れたとき,どう生きるかを選択することができる。

3)変容の逆説理論
人は,自分でないものになろうとする時ではなく,ありのままの自分になる時に変容が起こる(Beisser, A.R, 1970)。大切なのは,ありのままの自分を認めることである。

4)我と汝
ブーバー(Martin Buber)は,他者を自分の欲望の対象とする「我-それ」の関係ではなく,他者をひとりの存在として尊重する「我-汝」の関係を重視した。あるがままの存在としての自分を受け入れることができる時,あるがままの存在としての相手を受け入れることができる。
一方,現象学は,19世紀末にキルケゴール,フッサール,ハイデガーらによって主張されたもので,これもまた提唱者によって少しずつ概念が異なるが,一言で言えば,事象や現象を先入観や1つの見方にとらわれず,あるがままに見て,記述することを言う。我々は,同じものを見ていても,人によって見方は異なる。そして,それはどれ1つ,否定されるものではない。なぜなら,その人にはそのように見えているというのが,主観的な事実だからである。そして,それは人によって異なっており,1つの正しい事実があるのではない。そのため,現象をとらえるときには,すべての判断や理論を脇において,その現象をありのままにとらえる必要がある。

ゲシュタルト療法は,このような哲学・人間観に基づいた生き方を援助する心理療法である。そして,それは以下のような理論に基づいて実現される。

2.「今ここ」での気づきとコンタクトを中核とした理論体系
1)ホメオスターシス(恒常性)
ありのままの自分でいると何が起きるだろうか?有機体は,生命維持のため,内界・外界の変化に対応して,バランスを維持しようとする生理的機能を持つ。この有機体としての生物が持つ自己調節機能をホメオスターシス(恒常性)という。つまり,我々は,外界および内界の現実に適応するように自己を調節しながら生きている。そして,ホメオスターシス(自己調節機能)が働くためには,「今,ここ」の外界(外層)および内界(内層)の現実に気づき,コンタクト(接触)していることが必要である。

2)図と地,気づきのサイクル
しかし,我々は,外界,内界のすべてのことに気づいているわけではない。気づくことができるのは一度に一つだけであり,その時に自分にとって意味のあるもの,欲求が向くものを認識する。これを「図」という。一方,それ以外のものは意識せず,背景に退く。これを「地」という。通常,人間は,その時々に自分にとって重要な欲求を図として認識し,それを満たす(完了する)。1つの欲求が満たされると,その欲求は地に引っ込んで意識されなくなり,次の欲求を図として意識する。そのような気づきのサイクルをくり返して,我々は生きている。    
しかし,人間の場合,自己調整機能はもう少し複雑である。人間は,生まれたときから関係性の中で生きていかなければならない。特に,小さい子どもは,大人に育ててもらえなければ生きていけない。そのため,小さな子どもは,大人に適応するように自分を調整する。このような調整は,思考の領域(中間層)でなされる。つまり,「今ここ」で欲求を充たすことができなかったり,充たすことが危険な場合,思考や想像を働かせることで,欲求を地に抑圧し,自分を守るのである。たとえば,子どものころ,何かを欲しがると親に怒られたので,「何も欲しがらなければ怒られない」と考え(想像し),「欲しい」と言わないようにする。

3)未完了の事柄(unfinished business)
しかし,地に抑圧された欲求は,なくなってしまうわけではない。それは未完了の事柄となり,無意識の中で完了を求め,我々の心や身体に影響を与え,それがさまざまな葛藤や病理を生むのである。パールズはこれを「凍りついた炎」と呼んでいる。
そこで,ゲシュタルト療法では,地に抑圧された未完了な欲求に気づき,コンタクトし,完了することを重視する。しかし,未完了な欲求に気づくためには,どうしたらよいのであろうか。

4)心身一元論,「今ここ」の気づきとコンタクト
ゲシュタルト療法では,人間の心と身体を一元的にとらえ,地に抑圧された欲求は,身体感覚や感情として体験されると考える。そして,それに気づいてコンタクトすれば,ホメオスターシス(自己調節機能)が自然に働き,完了へ動き出すと考えるのである。

3.身体との対話,「今ここ」での体験,関係性を重視した技法
1)身体との対話
そこで,ゲシュタルト療法では,言語で表現されているものだけではなく,むしろ「今ここ」の身体感覚,感情に焦点を当て,時間をかけて身体の声を聴くことによって,「今ここ」で感じているが意識されていない欲求への気づきを促す。

2)「今ここ」での体験
実は,私たちの体験は,外層,内層,中間層の三つの領域から成り立っている。そして,私たちが中間層で体験しているとき,私たちは「今ここ」にはいないことが多い。思考や想像の世界にいるのである。それは,自分を守るいつものやり方であり,そのために欲求は完了しないのである。ゲシュタルト療法では,中間層にいるクライエントに,「今ここ」でいつもとは違う体験(実験と呼ばれる)をしてもらうことにより,ありのままの自分の存在,ありのままの自分の欲求への気づきを促す。

3)関係性の重視
いつもと異なる体験をするためには,場の安全性が重要となる。ゲシュタルト療法ではそのために,クライエントがありのままの自分でいられるようなファシリテーターとクライエントの関係性を重視し,その関係性の中でクライエントが安心して自分の欲求に気づき,それを完了できるような新たな体験をできるようにするのである。

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