∞メール No.30

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一部を抜粋したものを下に掲載しています。

会員の皆様
条件反射制御法学会の目的は、会則に記すように、ヒトの行動原理を明確にすることや技法の整理だけでなく、反復する違法行為に対応する社会制度のあり方に関しても研究を行います。その中には刑事司法体系をどのように再構築するべきかという課題も含まれています。
尾田真言氏(NPO法人アパリ)は、2000年7月に覚せい剤取締法(当時の表記使用)違反(自己使用)の被告人に対して治療を目的として保釈を得て、ダルクに入寮させることを開始しました。当初は執行猶予判決が見込まれるケースを対象として、前もって被告人と家族等に働きかけ、ダルクに入寮することを計画して、ダルクを制限住居とする保釈を得ていました。
ところが、2009年に第一審で実刑判決を言い渡された後に、法律上、実刑判決しか言い渡すことができない累犯ケースを、尾田氏は故奥田保弁護士と協力して、下総精神医療センターに入院させました。それまでは、実刑が確実な累犯事案や執行猶予中の再犯事案では保釈が許可されることはありませんでした。覚醒剤乱用に対して、日本の刑事司法上、実刑確実事案で純粋に治療を目的にして保釈が許可された初めてのケースだったのです。その保釈は、刑罰が決まった上で尾田氏と故奥田保弁護士が刑事司法体系を治療の強制に利用する道筋を示し、裁判官がこれを認めたものでした。刑事司法体系にあった厳罰主義からの展開を告げる大きな出来事でした。そのケースに対する治療を私が担当できて幸運だったと感じています。
その後、保釈を得て、刑事司法体系の強制力を利用して所在地を限定し、治療を半ば強制して、同一行動を反復する精神状態の改善に効果を上げること、あるいは、それを含む良い情状を作って刑の軽減を狙う方法は、現在では刑事裁判にかかわる多くの弁護人が用いています。また、一部の裁判官や検察官はその方法に協力的です。
同様に小早川明子氏(NPO法人ヒューマニティ)はストーカー行為の被害者側に寄り添い、加害者に対して入院治療とその後の治療継続を条件にして示談をまとめる働きかけをします。また、相談を受けていたストーカー行為者が検挙された場合には、保釈を利用して、入院治療を実現させることもあります。
先月、私は上の方法を万引きに適用することを思いつきました。弁護士が被害を受けた店舗側から依頼を受け、加害者に働きかけ、治療を条件に警察への通報を猶予し、治療の実現を確認するという契約を結んで、それを実行させるのがよいと考えたのです。直ちに、私は、万引きした加害者の弁護にご活躍の林大悟弁護士(鳳法律事務所)に電話をかけてそれを提案しました。
林大悟弁護士の回答は、なんと、すでにそれを開始しており、「この問題に現場で深く関わっている人は、考えることが同じなんですね」とのことでした。
林大悟弁護士とのやりとりを今月開催された理事会で報告し、条件反射制御法学会が林大悟弁護士を中心にして、その方法に関する研究を進めていくことにしました。
後の理事会の報告にも簡単に記載いたします。

平井愼二
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