特別研究会
(オンライン)

【テーマ】
薬物乱用に対する援助側と取締側の∞連携を精査する
2023年4月22日(土)
19:00~21:00

テーマ

薬物乱用に対する援助側と取締側の∞連携を精査する
【報告者】平井愼二

開催概要

●日程・開催時間
2023年4月22日(土) 19:00~21:00
※後半30分間は意見交換

●形式
オンライン開催 Zoom(※)で行います
※Zoom(ズーム)とは無料で簡単に使えるWebサービスです。事前にアプリのインストールが必要です。
PC、タブレット端末、スマートフォンでご視聴いただけます。ご視聴にはインターネット環境が必要です。
参加に伴う通信料は参加者様負担となります。

●事務局
条件反射制御法学会事務局

受講費について

(参加費用)
●会員
無料
●非会員
3,000円

(2023年度会員年会費)
●会員の方
会員更新を希望される方で2023年度年会費未払いの方は、申込時に年会費:5,000円をお支払いください。

●非会員だが2023年度の会員になって参加する方
申込時に年会費:5,000円をお支払いください。
※会員資格発生後は、学会誌の最新号と会員向けメールマガジンをお送りします。

(1)参加費はお支払い後、参加者様都合の場合、返金はできかねますので、ご了承ください。
(2)ご入金確認後、研究会開催3日前までには、お申し込み時のアドレスへ参加用URLを送信します。

お支払い方法
●郵便振替
自動返信メールの記載を必ずご確認ください。

●クレジットカード
申し込みフォームより必要事項を入力しお支払いください。
※決済プラットフォームはStripe(ストライプ)を使用しています。

申込み方法について

上記タブ「申し込みフォーム」からお申込みください。
※申込完了時に申し込みフォームに記載された「連絡先メールアドレス」に自動配信されます。
自動配信メールが届かない場合は、受付が完了していない場合がございます。問い合わせ先のアドレスに照会をお願いします。
※HP申し込みフォーム以外の郵送・電話・E-mail等による申し込みは受理できませんのでご注意ください。

募集期間

受付期間を終了いたしました。
・郵便振替でお支払いの方:2023年4月11日(火)まで
・クレジットカード決済の方:2023年4月19日(水)まで

注意事項

PCの問題、WEB接続環境が整っていない等の接続に関するサポートは行っていませんので、ご了承ください。

研究会についての問い合わせ先

下総精神医療センター  担当:寺内 〈受付時間:平日9:00~15:00〉
〒266-0007 千葉県千葉市緑区辺田町578番地
E-mail:crct.mugen@gmail.com 電話:043-291-1221(内線8328)

研究会当日の緊急連絡先

NPO法人アパリ 担当:尾田
電話:090-3047-1573

参加申込受付を終了しました。
たくさんのお申し込み、ありがとうございました。

特別研究会「薬物乱用に対する援助側と取締側の∞連携を精査する」

条件反射制御法学会は、2022年9月10日に第11回学術集会を開催した。テーマは「薬物乱用に対応する者の役割と連携」であった。その学術集会の中で、援助側と取締側の関係を焦点にしたシンポジウム「∞連携を精査する」を開いた。ここまでの経過は、学術集会に参加された方は把握されているが、参加されていない方は、どのような案を基盤にして議論を進めたかが把握できるので、次のURLで開く抄録をご覧いただきたい。

上記のシンポジウムを開いた経緯を簡単に示そう。

私は1989年に、規制薬物の摂取が原因で精神科医療を受療する者に、専門的な対応をする部門で働き始めた。主な問題の1つが、対象者の薬物規制法違反を援助側の者がどのように対応するかであった。これに対してやっと1999年に構想した案が、∞連携と後に名付けた体系である。その中で援助側職員はほぼ純粋に治療に専念し、規制薬物摂取という違法行為に関しては通報せず、二週間以上経て証拠がなくなった時点で患者側が受け入れたら、患者の規制薬物使用傾向と患者を同定する情報を、取締側職員に援助側職員から連絡するものであった。また、∞連携において取締側は検挙した者の特性に応じて、刑罰だけでなく、必要な治療も適切な強制力をもって提供するとしていた。

連携の骨格は構成できたが、違法行為を反復する者にどのような疾病性があってどのように対応するか、なにを犯罪として責めるかは、今から考えるとまだ不明確であった。そのような状態で規制薬物乱用者への対応を続けていた。

その後、私は2006年に、売人の顔を見ると排便したくなるという患者の言葉をきっかけにして、条件反射制御法を開発した。その実践と思索によりヒトが行動する本当のメカニズムを、実際のヒトに対してはたらきかけをするための理論として十分だと考えるものに至った。その理論はパヴロフの信号系学説を基にして、ヒトの中枢は2つあり、その一つは、過去の生理的成功行動を反復する第一信号系であり、もう一つは未来に社会的成功行動を創造しようと第二信号系であり、表出する行動は強い側の信号系のものになるというものである。そして、反復する行動は、第一信号系が優勢になって生じる。

その理論から、援助側と取締側の連携においては、援助側は受容的に、第一信号系を標的にして、治療と必要な訓練を用いて社会生活からのさまざまな刺激に過不足のない反応が生じるように整える役割を受け持ち、取締側は強制的に、第二信号系を標的にして、できること、してはならないことを教育し、してはならないことをしたことに対しては刑罰を科す役割を受け持つべきであり、さらに、してはならない行動が無意識的に生じる疾病状態に対象者があれば、第一信号系に対する必要なはたらきかけを強制するべきであると考えた。

一方、現在の取締側は幻覚妄想や興奮等がなければ、あるいは軽微であれば、「自由な意思」というものが正常に機能することを前提にして、刑罰で対応している。ヒトの行動メカニズムに関して援助側を見ると、精神医学や心理学の領域でもやや異なるが類似しており、つまり、ヒトは無意識的にも未来に成功する行動を計画して実行するという前提に基づいたはたらきかけをしている。

そして現在の取締側の結果は、刑務所人口の多くが違法行為を反復した者達により占められているという現実がある。その結果からは、現在の取締側が基づく理論が誤っており、条件反射制御法の実践で構成した信号系学説を基盤とする前出の理論が正しいと考える。しかし、まだ、その知識は限定的な普及であり、業務において日常的に用いられている職場は少なく、理論を展開する際に円滑に用いられる程度には至っていないのかもしれない。

そのようなことが手伝ってか、2022年9月の学術集会におけるシンポジウム「∞連携を精査する」でもなかなか議論が深まらなかった。その、もう1つの理由としては私が示した∞連携の一部が不明なままであったからである。シンポジウムで受けた意見により気づき、今回の特別研究会「薬物乱用に対する援助側と取締側の∞連携を精査する」の開催に向けて思索を進め、整った。

∞連携の骨格を思いついたのが前記したように1999年の正月であった。さまざまな実践や議論、あるいは原理の発見があり、現場の取締職員の動き方を体験し、思索を重ね、やっと2023年2月の終わりころに∞連携の理論を完成させられた感覚がある。その理論をこの研究会で報告する。

2023年3月15日
平井愼二

ヒトが行動するメカニズムに適った薬物乱用に対する連携体系
― シンポジウム「∞連携を精査する」の検討を経て ―

報告者:平井愼二(下総精神医療センター)

1.ヒトの行動を構成する2つの中枢
ヒトは、反射で無意識的に過去の生理的成功行動を再現する第一信号系と、思考して意識的に未来に社会的成功行動を創造しようとする第二信号系をもつ。環境からの刺激により各系が各方式で作動し、相互に刺激し、行動の表出に際して、その時点の主題に関して2つの系の方向が異なれば、強く作動する系が行動を牽引する。

2.規制薬物摂取を生じさせる中枢
規制薬物を摂取する行動の初回のものあるいは機会的な発現に留まっているものは、第二信号系の作用による。
一方、習慣的に規制薬物摂取を反復する現象は、第一信号系において規制薬物摂取を司る反射連鎖が作動して生じるものである。その内、第一信号系にある規制薬物摂取を司る反射連鎖の作動性より第二信号系のもつ制御能力が強い場合に生じるものは、その行為が発現することを第二信号系が積極的にあるいは消極的に選択している。逆に、第一信号系にある規制薬物摂取を司る反射連鎖の作動性より第二信号系のもつ制御能力が弱い場合に生じる規制薬物摂取は、規制薬物摂取という行動を第二信号系が制御することはできず、つまり、自由な思考によらず、その行動が生じている。

3.各作用に対応するはたらきかけ
第一信号系の作用に対応して規制薬物摂取反復をやめさせるはたらきかけは、規制薬物摂取という行動を司る過剰な反射連鎖を治療により抑制し、ストレスを受けて行動の駆動を高めないために、必要であればさまざまな生活技能に不足した未熟な反射連鎖を強化する生活訓練が求められる。
また、第二信号系の作用に対応する規制薬物摂取反復をやめさせるはたらきかけは、健康な生活のあり方を教育し、また、規制薬物摂取に対して刑罰等の望まない処遇の強制を意識させることである。

4.対象者に円滑にはたらきかけを提供する∞連携
前項目に示したはたらきかけを各対象者に応じて提供するものとして、平井は、治療や訓練を提供する援助側と検挙して強制的な対応をする取締側が効果的に協力し合う次の連携のあり方(∞連携と呼ぶ)を構想した。
取締側の職員は、将来の規制薬物使用を防ぐために検挙を背景にした強力な指導を行い、既遂の規制薬物使用は厳正に取締り、処分においては刑罰だけでなく対象者に応じて援助へのかかわりを適切な強制力を持って指導する。 援助側職員は、対象者による既遂の規制薬物使用を取締機関に通報せず、援助の提供を優先し、また、対象者の同意が得られれば取締側職員に対象者の存在と規制薬物使用傾向を伝え、これを将来の規制薬物使用に対する抑止力として利用する。

5.検挙した規制薬物摂取行動成立の決定要因に強制するはたらきかけ
検挙した規制薬物摂取行動が、その行動を司る第一信号系の反射連鎖の作動性より第二信号系のもつ制御能力が強い状態で生じたものと判定すれば、対応は規制薬物摂取行動を生じさせた第二信号系へのはたらきかけであり、刑罰を科すべきであり、教育を強制するべきである。
逆に、規制薬物摂取行動を司る第一信号系の反射連鎖の作動性より第二信号系のもつ制御能力が弱い状態で生じたものと判定すれば、対応するはたらきかけは、第一信号系へのはたらきかけとしては、検挙された規制薬物を司った反射を抑制する治療と必要に応じて生活技能を強化する訓練が強制されるべきであり、ならびに、前もって規制薬物摂取を回避するための治療や訓練を受けなかったという第二信号系の選択には刑罰を科すべきである。

6.制御能力に影響する強制処遇の重さおよび切迫度
規制薬物摂取に対する制御能力の有無の判定は、その行動に対する支配は第一信号系と第二信号系のどちらが強いかという問題である。第一信号系の強さは、その行動を過去に反復した頻度や累積および受けてきた精神的負荷が決定する。第二信号系の強さは、生来の性質にも影響されるが、規制薬物摂取行動に対する刑罰の重さ、あるいは検挙された規制薬物摂取行動の前にそれを避けるための治療等を受けなかった選択に対する刑罰の重さならびに強制される治療等の内容や期間等に影響され、また、それらの刑罰を含む強制処遇への切迫度に影響され、そのときの関係する社会的要素により変化するものである。

7.行動制御能力の判定に求められる生理的および社会的な要素の検討
幻聴や妄想等による判断能力の障害が影響した違法行為に対する判定は、生理的な異常を焦点にした精神鑑定の重要性は極めて高く、社会的要素の影響は比較的少ない。一方、反復傾向のある違法行為に対する行動制御能力の判定は、生理的な逸脱に加えて、関係する社会的要素が強く影響するものである。
従って、検挙した反復傾向のある違法行為に関する制御能力の有無を判定する基準は、ヒトが行動する本当のメカニズムに従って、法務省と厚生労働省が協議して、刑罰といくつかの代表的なケースに対する処遇様式を示しておくべきである。その上で、現場においては裁判を担当する裁判官と精神科医師等が協議して、示された処遇様式からいずれかを選択して、個々のケースに応じて細部を変更して、強制する内容を決定する制度が適切である。

8.ヒトが行動するメカニズムに適った制度による社会への影響
ここで提案する制度においては規制薬物を摂取して検挙された者は、その行動に対する制御能力の有無にかかわらず、必ず、刑罰が科される。検挙された規制薬物摂取に対する行動制御能力がないと判定された対象者には、刑罰に加えて、検挙前には選択しなかった治療等も強制される。
このように、ヒトが行動するメカニズムに適った判定と対応する処遇の強制が法によりなされることは、検挙された者に規制薬物乱用者に刑罰のみならず、必要な治療等が提供される確実性が高まる。また、検挙されていないが第一信号系により規制薬物摂取が生じる者にはその行動への抵抗と治療等を受けることを動機付ける。さらに、一般国民には、規制薬物摂取は開始するべきではなく、また、規制薬物摂取には治療等が必要であるという知識を広め、そのような文化を形成する方向にはたらく。

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