第18回研究会
(オンライン)
【テーマ】
ヒトの社会と拘禁刑の非対応性および再構築 ~行動機序からの再検討~
2026年1月19日(月)
19:00~21:00
テーマ
ヒトの社会と拘禁刑の非対応性および再構築 ~行動機序からの再検討~
●報告者
平井愼二先生
(ライフクリニック院長)
開催概要
●日程・開催時間
2026年1月19日(月)19:00~21:00
前半60分は報告、後半60分間は意見交換の予定です。
●形式
オンライン開催 Zoom(※)で行います
※Zoom(ズーム)とは無料で簡単に使えるWebサービスです。事前にアプリのインストールが必要です。
PC、タブレット端末、スマートフォンでご視聴いただけます。ご視聴にはインターネット環境が必要です。
参加に伴う通信料は参加者様負担となります。
●事務局
条件反射制御法学会事務局
受講費について
(参加費用)
●会員
1,000円
●非会員
3,000円
(2025年度会員年会費)
●会員の方
2025年度年会費未払いの方は、お申込み時に年会費を併せてお支払いください。
会員参加費に加えて、2025年度年会費 5,000円
●非会員だが2025年度の会員になって参加する方
※2025年度は2025年4月1日から2026年3月31日です。
会員参加費に加えて、2025年度年会費 5,000円
※会員資格発生後は、学会誌の最新号と会員向けメールマガジンをお送りします。
(1)参加費はお支払い後、参加者様都合の場合、返金はできかねますので、ご了承ください。
(2)ご入金確認後、研究会開催2日前までには、お申し込み時のアドレスへ参加用URLを送信します。
お支払い方法
●郵便振替
自動返信メールの記載を必ずご確認ください。
●クレジットカード
申し込みフォームより必要事項を入力しお支払いください。
※決済プラットフォームはStripe(ストライプ)を使用しています。
申込み方法について
下記注意事項をご確認いただき、お申し込みください。
・申込完了時に申し込みフォームに記載された「連絡先メールアドレス」に自動配信されます。
・自動配信メールが届かない場合は、受付が完了していない場合がございます。問い合わせ先のアドレスに照会をお願いします。
・HP申し込みフォーム以外の郵送・電話・E-mail等による申し込みは受理できませんのでご注意ください。
募集期間
・郵便振替でお支払いの方:2026年1月8日(木)まで・クレジットカード決済の方:2026年1月13日(火)まで
注意事項
PCの問題、WEB接続環境が整っていない等の接続に関するサポートは行っていませんので、ご了承ください。
研究会についての問い合わせ先
条件反射制御法学会事務局(ライフクリニック内) 寺内
TEL:043-215-7070
E-mail:crct.mugen@gmail.com
ヒトの社会と拘禁刑の非対応性および再構築~行動機序からの再検討~
【報告者】
ライフクリニック 院長
平井 愼二
従来の懲役と禁固刑が統合され、拘禁刑になった。この新たな規定により、検挙された違法行為が犯罪であると判定されて刑事施設に収容された人に対して、必要な指導を提供できる。
時代劇では、刑を終えて社会に戻った人を受け入れ、導き、勇気づける優しい対応により立ち直っていく姿が描かれることがある。これは創作の世界であるが、そのような支援的な関わりが効果的であることには、多くの人が賛同している。
現実では、戦後の改革の中で1949年の犯罪者予防更生法が生まれ、犯罪を防ぐための支援が制度になった。2016年6月には、刑の一部執行猶予制度が導入され、緩やかに強制力を用いた治療の提供が始まった。そして2025年6月1日からは、刑事施設内で指導が行える拘禁刑が施行された。
上記の変遷は同一違法行為の反復への対応に、治療を強制する態勢が高まってきたことを示している。これは、同一違法行為の原因に疾病性があるという理解の深まりに伴う正しいものである。薬物乱用、万引き、ストーカー行為等の原因を見つけ、改善して、再発を予防しようとする態勢の表れの一つが拘禁刑であり、この点において拘禁刑は合理的である。
しかし、刑罰は自由刑であることを尊重するべきであり、それに反する拘禁刑は民主主義を崩壊させるもとになるとして、先に述べた合理的な働きかけさえ受け入れようとしない意見もある。この意見が実現されれば、刑事司法体系が関わったにもかかわらず、反復性違法行為の原因が放置されたまま社会に戻る人が多い状態が保たれる。拘禁刑をめぐる議論においては、刑罰は純粋な自由刑であるべしとする意見は、後退させることがよい。
私は拘禁刑が治療を強制する方向のものであると理解しており、その点に関しては再犯予防のために必要な対応であるから、賛成である。
しかし、拘禁刑を定めた法文では「必要な指導を行うことができる」と規定されているだけで、提供するものが治療でもよいのか、また強制してもよいのかなどが不明な表現となっている。不明な表現にとどめられた理由は、拘禁刑は犯罪性のある行為であったと裁判で判定した人に対して、刑事施設内で疾病性に働きかけるという捻じれがあることから、明確に言い切れなかったのであろう。つまり違法行為が犯罪性と疾病性のいずれで生じたのかが整理されていないこと、並びに何が犯罪で何が疾病かという理解に誤りがあることが捻じれの原因である。
この捻じれは見過ごしてはならないが、ただ、いけないものであると指摘する気にはなれない。拘禁刑の実現には、治療の必要性を理解し、その提供を最優先事項とした方々の苦悩と社会を支えようとする強い意志を感じ、敬意さえ覚えるからである。
私はそのような感覚をもちながらも、拘禁刑が現行のまま存続することに反対する。拘禁刑は前述の捻じれにより、刑事司法体系の理論的な破綻を明らかにしたのであり、行動制御能力に障害が生じた病態に関する誤解は、制度と治療技法の両方において次のような不備を生じるからである。
制度における不備は、疾病を原因として生じた違法行為に対する判決において、治療を強制すると明確に言い切れないこと、並びに、疾病性が高く再犯の可能性がある人を執行猶予にして社会内に放置することがあることである。
治療技法における不備は、行動制御能力に障害がある疾病状態を認知にゆがみがあるという表現で誤って捉え、障害に対応しない治療技法を用いるからである。
上記に対して、ヒトは思考に従って行動するという前提を見直し、ヒトが行動する本当の機序を正しく把握し、それに基づいた対応をすることで、刑事司法体系に捻じれを生じさせず、疾病性には治療の提供を強制し、犯罪性には刑罰を科すことができる。
ヒトが行動する機序は次のようなものである。
動物は刺激に対して作動する反射の内、最も強い反射によって行動が生じる性質をもつ。最強の反射は生命を最も効果的に支えたものであり、その性質をもつ種が生き残ったからである。
ヒトは、反射連鎖が過去の行動を再び表出する作用をもつ。ならびに反射網の作動により未来の行動を中枢内で体験して選択し表出する作用ももつ。その2つの作用によって行動する。同一違法行為をしない計画をもちながらも行為に及ぶのは、その行為を促進する反射連鎖が、状況に応じて行為を選択する反射網より強いという行動制御能力のない疾病状態にあるからである。このヒトの行動機序と判定法に基づき、反射連鎖には治療を、反射網には刑罰を対応させることにより、合理的で捻じれのない制度が次のように実現できる。
刑事司法体系は、国民に対し、同一違法行為を反復する疾病状態に至った人はそれを改善するための治療を受ける義務をもつとし、その怠りを犯罪として刑罰を科す規定を新設する。
反復性のある違法行為で検挙された人の内、行動制御能力の有る人には、反射網がその行為を為す選択をしたという犯罪性に刑罰を科し、治療は勧奨にとどめる。他方、行動制御能力の無い人には、反射連鎖がその行為を発現させるという疾病性に対して治療を強制し、かつ、検挙前に反射網がその行為の再発を避けるための治療を選択しなかったという犯罪性に刑罰を科す。
また、この制度は、検挙されずに社会内にいる人の内、該当行為に関して行動制御能力の有る人の反射網に初発と再発を回避させ、新設した規定により行動制御能力の無い人の反射網に治療を求めさせることで、予防効果も発揮する。