第16回研究会
(オンライン)
【テーマ】
発達障害を通して心の発達をみる
2025年1月27日(月)
19:00~21:00
テーマ
発達障害を通して心の発達をみる
●報告者
大嶋正浩先生
(メンタルクリニック・ダダ 理事長)
開催概要
●日程・開催時間
2025年1月27日(月)19:00~21:00
※後半40分間は意見交換
●形式
オンライン開催 Zoom(※)で行います
※Zoom(ズーム)とは無料で簡単に使えるWebサービスです。事前にアプリのインストールが必要です。
PC、タブレット端末、スマートフォンでご視聴いただけます。ご視聴にはインターネット環境が必要です。
参加に伴う通信料は参加者様負担となります。
●事務局
条件反射制御法学会事務局
受講費について
(参加費用)
●会員
1,000円
●非会員
3,000円
(2024年度会員年会費)
●会員の方
2024年度年会費未払いの方は、お申込み時に年会費を併せてお支払いください。
会員参加費に加えて、2024年度年会費 5,000円
●非会員だが2024年度の会員になって参加する方
会員参加費に加えて、2024年度年会費 5,000円
※会員資格発生後は、学会誌の最新号と会員向けメールマガジンをお送りします。
(1)参加費はお支払い後、参加者様都合の場合、返金はできかねますので、ご了承ください。
(2)ご入金確認後、研究会開催2日前までには、お申し込み時のアドレスへ参加用URLを送信します。
お支払い方法
●郵便振替
自動返信メールの記載を必ずご確認ください。
●クレジットカード
申し込みフォームより必要事項を入力しお支払いください。
※決済プラットフォームはStripe(ストライプ)を使用しています。
申込み方法について
下記注意事項をご確認いただき、お申し込みください。
・申込完了時に申し込みフォームに記載された「連絡先メールアドレス」に自動配信されます。
・自動配信メールが届かない場合は、受付が完了していない場合がございます。問い合わせ先のアドレスに照会をお願いします。
・HP申し込みフォーム以外の郵送・電話・E-mail等による申し込みは受理できませんのでご注意ください。
募集期間
・郵便振替でお支払いの方:2025年1月20日(月)まで・クレジットカード決済の方:2025年1月23日(木)まで
注意事項
PCの問題、WEB接続環境が整っていない等の接続に関するサポートは行っていませんので、ご了承ください。
研究会についての問い合わせ先
条件反射制御法学会事務局 担当:寺内
E-mail:crct.mugen@gmail.com
第16回研究会
「発達障害を通して心の発達をみる」の紹介
本人と家族などの周囲の者、さらには社会を悩ませる疾病には、パラフィリア症(性嗜好障害)、病的窃盗、物質使用障害などがある。これらの疾病が成人に生じた際に刑事司法体系が関われば犯罪行為になり、主に刑罰で対応される。援助的に対応される場合は、さまざまな対応があり、それらの一つが精神科医療である。
私は精神科医療を通じて、主に成人による逸脱行動の反復に対応してきた。仮に、様々な方向に逸脱が激しい群は行動が行動の反復には至らず、手厚い保護の対象になる。私が精神科医療で対応する者達の多くは、社会性を一定のところまでもつことから社会の中で自立して、あるいは家族等の支援をうけながら生活できる段階にある者である。つまり、私の対象者はもともとの逸脱の程度が前記の犯罪ともなる逸脱行動を社会内で激しく反復しやすい段階にある者でもある。
それらの者に対応する精神科医療の臨床では、逸脱行動を生じさせる欲求や衝動を抑えること、そして、必要性を評価して対象となる者には生活訓練を提供する施設で訓練を受ける提案をして導くことが主な役割になる。精神科医療が発揮するべき役割は欲求や衝動を抑えることであると私は考えるが、過去にはこの役割を意識できず、果たせていなかった。しかし、条件反射制御法を用い始めた後はそうすることが可能であると知り、その役割を徐々に果たせるようになってきた。
また、反復する違法行為は疾病性と犯罪性を持つのであり、その把握の仕方をヒトの行動メカニズムに基づいた理論的なものに高めながら、精神科医療を含む受容的な治療体系と刑罰を含む強制力を発揮する刑事司法体系の連携を構成してきた。しかし、それは疾病性が違法行為として表出した者に、人生の流れの中では一時点における様々な要素に横断的に関係機関の連携で対応しようとするものである。
私は2024年11月に開催された日本多機能型精神科診療所研究会による施設見学会に参加した。対象施設は社会福祉法人デンマーク牧場福祉会の精神科診療所「こひつじ診療所」であった。前日の顔合わせで、今回の講師となる大嶋正浩先生の隣に座らせていただき、大嶋先生から児童を対象にした精神科医療の焦点に関して教えを受けた。大嶋先生は抄録の中で、「児童外来にくる子たちの大部分は自閉スペクトラム症(閾値下含む)と考えている」と記されている。その群が、私が示した前段落の逸脱行動を社会内で激しく反復しやすい段階にある群と重複する部分が大きいのであろう。
また、見学会の当日は、隣接する児童養護施設と自立援助ホームで生活する子どもたちの成長を見守る診療も展開するこひつじ診療所を訪問し、多機能型精神科診療所の高い機能を垣間見た。それまでは、児童の問題にも条件反射制御法は効果を生じるであろう程度の把握であったが、時間の経過を見渡しての縦断的な連携が浮かんだ。大嶋先生も上記の自閉スペクトラム症(閾値下)をもつ群について、抄録で「嗜癖に陥る場合も少なくない」とされている。
また、大嶋先生に私から条件反射制御法についてお伝えしたところ、理解してくださっただけでなく、児童精神科領域での治療技法として期待さえしてくださったのではないかと思われるお言葉をいただき、今回の講師をお願いした。
今回の研究会では、児童精神科の臨床あるいは児童に関わる施設においてどのような対応がなされているかをご教授いただき、また、どのように条件反射制御法を用いられるかを検討できるはずである。人生の流れの中で発達にしたがった対応を繋ぐ連携を構想し、良い未来を想像する時間にできると感じている。
2024年12月
条件反射制御法学会
理事長 平井愼二
テーマ:発達障害を通して心の発達をみる
【報告者】
メンタルクリニック・ダダ
理事長 大嶋 正浩
昨今発達障害の話題が溢れている。44年前に精神科医になったころは児童精神科を専門にしたいというと変わってるねと言われた。特にその頃から自閉症が中心的に気になっていたわけではなく思春期の子たちの表れや統合失調症になる前の状態像やどんな育ち方をしていたのだろうということに興味があった。やせ症の治療や当時の児童期分裂病の治療、登校拒否やさまざまな子どもの不適応の治療をして行くうちに、より幼い頃はどういう発達をしていたのか、なぜこの状態に至ったのか等を考えることが大事であると思った。
児童精神科と言え、精神科医がより幼い子の診療に足を踏み入れるのは躊躇されたが、開業し自己責任で展開できるようになり、平成10年ごろから幼児期の診療に重きを置き始めた。療育等も関与する中で、地域全体が気になり浜松市に療育体制の改善を訴えた。結果、1歳半検診の後の早期療育を民間に委託する案となった。当時7か所中1か所、現在7か所中3か所の発達支援広場を当法人で運営している。その中で、より医療が必要だと思われる子をクリニックで診ており、新規外来の半数近くが広場からの紹介になっている。2か所のクリニック、2か所多機能型福祉事業所で、心理の常勤25名、非常勤25名体制となり、地域への活動をするに至っている。
途中は割愛するが、知的障害を伴う自閉症の臨床モデルから、1998年にローナ・ウィングが自閉スペクトラムという概念を提出した。①社会性の障害②コミュニケーションの障害③常同的・限定的な行動の三つ組みの障害という概念が有名である。その後現在に至るまで、概念の進化は進んでいる。最近の話題は診断閾値下の高機能自閉スペクトラム症であろう。
ここからは、私見が増えるのでご容赦願いたい。私を含め何人かの臨床歴の長い児童精神科医は、児童外来にくる子たちの大部分は自閉スペクトラム症(閾値下含む)と考えている。しかも、統合失調症を含め、大部分の様々な方たちの背景には同問題が横たわっていると考えている。アディクションも含めてである。
もちろん自閉スペクトラムの問題の関与がすべてを決定するわけではなく、環境因も同様に関与する。しかし、その環境を受ける側の子にこの問題があると、環境の影響がひどく増大すると思われる。
何が、そんなに大きい問題になるのかというと、基本的な安心感の獲得が難しい、自己肯定感が損なわれている、周囲との対象関係が部分対象関係であったり損なわれていたりする、人との愛着形成に失敗する、安定した自我が育ちにくい、カモフラージュという呼び名(昔のas if personality)のように、仮の社会性を持ちやすい、等が基盤にある人格となっていく。結果、様々な適応の失敗が起こる。臨床をやっている皆様からすれば、これらの問題があれば、その温床からすべての疾患が育ちうるということが想像されると思う。
もう少し、リアルな表現にすると、周りの人の情や思いが伝わりにくい、あるいは勘違いして被害的に受け止めてしまう。ごく早期から、周囲とつながった感覚を持つことが難しく、常に孤独でありながら表面的には周囲に合わせてしまう生き方、あるいは孤立した生き方を選んでしまう。必ず、死(滅び)と隣り合わせとなり、容易に思春期でパニック、精神的混乱となる。表面的な適応(幼児期に周囲に反抗したり、ぐずり倒したり、問題を起こして周囲の強い関心を引いたりしない限り)をして年月を過ごすと、後日、むなしさ、寂しさ、空虚感に襲われ、それを埋め合わせるために嗜癖に陥る場合も少なくない。長い年月の問題なので、容易にはこのループから逃れがたい。
これらの問題を、早期のところから緩和したいというのが我々の活動であった。しかし、やむなく思春期に至った場合は、数年単位のかなり濃密な時間をともにし、症状の軽減を図っている。かなり退行し、幼児期の人間関係を再現し、少しずつ成長していく。しかし、人間の人生は限りがある。もっと、別なアプローチがあればとみていた。CBTもいいが、まだ、人生へのインパクトは弱い。今我々のぶつかっているところである。
今回、これらの考えを基盤に行っている我々の臨床と、子どもたちの育ち成長についてお話しできればと思っている。