第15回研究会
(オンライン)

【テーマ】
信号系学説から刑法理論を考えてみる(序説)
2024年7月8日(月)
19:00~21:00

参加申込フォームはこちら

テーマ

信号系学説から刑法理論を考えてみる(序説)
●報告者
岡田卓司 先生
(岡田法律事務所 弁護士)

開催概要

●日程・開催時間
2024年7月8日(月)19:00~21:00
※後半40分間は意見交換

●形式
オンライン開催 Zoom(※)で行います
※Zoom(ズーム)とは無料で簡単に使えるWebサービスです。事前にアプリのインストールが必要です。
PC、タブレット端末、スマートフォンでご視聴いただけます。ご視聴にはインターネット環境が必要です。
参加に伴う通信料は参加者様負担となります。

●事務局
条件反射制御法学会事務局

受講費について

(参加費用)
●会員
1,000円
●非会員
3,000円

(2023年度会員年会費)
●会員の方
2024年度年会費未払いの方は、お申込み時に年会費を併せてお支払いください。
会員参加費に加えて、2024年度年会費 5,000円

●非会員だが2024年度の会員になって参加する方
会員参加費に加えて、2024年度年会費 5,000円
※会員資格発生後は、学会誌の最新号と会員向けメールマガジンをお送りします。

(1)参加費はお支払い後、参加者様都合の場合、返金はできかねますので、ご了承ください。
(2)ご入金確認後、研究会開催2日前までには、お申し込み時のアドレスへ参加用URLを送信します。

お支払い方法
●郵便振替
自動返信メールの記載を必ずご確認ください。

●クレジットカード
申し込みフォームより必要事項を入力しお支払いください。
※決済プラットフォームはStripe(ストライプ)を使用しています。

申込み方法について

下記注意事項をご確認いただき、お申し込みください。
・申込完了時に申し込みフォームに記載された「連絡先メールアドレス」に自動配信されます。
・自動配信メールが届かない場合は、受付が完了していない場合がございます。問い合わせ先のアドレスに照会をお願いします。
・HP申し込みフォーム以外の郵送・電話・E-mail等による申し込みは受理できませんのでご注意ください。

参加申込フォーム

募集期間

・郵便振替でお支払いの方:2024年6月26日(水)まで
・クレジットカード決済の方:2024年7月4日(木)まで

注意事項

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研究会についての問い合わせ先

条件反射制御法学会事務局 担当:寺内
E-mail:crct.mugen@gmail.com

第15回研究会
「信号系学説から刑法理論を考えてみる(序説)」の紹介

条件反射制御法学会が刑事司法体系のあり方を研究の対象に含む理由は、まずは行動を変更するための技法も刑事司法体系も対象は共通しており、進化により第一信号系と第二信号系をもつようになった動物、つまりヒトであることである。

また、条件反射制御法が対象とする逸脱行動の多くが社会では違法行為とされているために、対象者がしばしば検挙される。そうすると刑事司法体系は対象者が第一信号系をもつことを知らず、刑罰を主とした対応を開始し、治療が一時的に中断される。治療が第一信号系に対応し、刑罰が第二信号系に対応するので、それらの異なる作用をそれぞれ持つ二つの領域は、つまり治療体系と刑事司法体系は関係を調整すればヒトの行動を効果的に変化させられる。それにも関わらず、不良な社会制度になっていることも、当会が刑事司法体系のあり方を検討する理由である。

これまで当会はさまざまな機会に法律の専門家を招き、反復傾向のある違法行為への刑事司法体系による対応のあり方について議論した。非会員の法律家と我々の見解はかなり異なるものであり、同調するところは少なかった。

そこで、当会での議論に非会員の法律家を招く際には、前もってヒトが行動する本当のメカニズムに関して情報を送り、一定の理解をもっていただいた上で、会において見解を主張していただき、議論を進めるようにした。しかし、まだ十分な同意には至らない。お話くださる法律家の多くは、現在の刑事司法体系に問題を感じるとし、解決案をある程度示してくださるのであるが、肝心のところで驚くほどに見解は異なる。

見解の相違の理由はおそらく二つある。

思考というものの性質が一つの理由である。

思考においては、刺激に反応した反射連鎖の作動によりさまざまな知識が生じ、それらの内、強く作動する反射連鎖が生じる知識が選択され、組み合わされて理論が展開し、それが刺激となり、反応したいくつかの反射連鎖が作動して新たないくつかの知識が生じることが反復する。

新たに獲得した知識が思考の展開中で適切に生じて、思考の方向を整えるものになるには、その知識を用いて理論展開を正しく行い、有効な結論に至って成功したと感じることを反復しなければならない。その経過の後に、さまざまな刺激に対して新たな知識を司る反射連鎖が適切な強度をもって作動するようになり、その知識が思考の展開中に適切に生じ、理論の展開を整えるようになるのである。

つまり、効果的な刑事司法体系を構想する理論を展開するには、ヒトが行動する本当のメカニズムを知ることは基本であるが、それだけでは不十分なのである。知識としてヒトが行動する本当のメカニズムを聞いたことがあっても、理論展開において、反復性のある違法行為が反射連鎖により無意識的にかつ無計画に生じることがあるという知識を適正に用いることは直ちにはできない。また、刑罰が逸脱した行動を促進する反射連鎖には無効であり、その対策は社会の平安を保つ効果において大きな制限があることを理論展開に組み入れられない。

従って、刑事司法体系の再構築を考える法律家に求められることは「ヒトは第一信号系ももっており、それが反射連鎖により無意識的にかつ無計画に違法行為を再現するのであるから・・・・・」と頭の中で考えた後に刑事司法体系をどのように再構成しようかと考えることを何回も反復することである。そうすると、ヒトの行動を変更するシステムの再構築を目的に、法律家が自然の摂理を尊重して、有効な思考ができるようになる。

主張が異なるままになったもうひとつの理由は、条件反射制御法学会におけるこれまでの検討により2023年になってやっと反復する違法行為に対する∞連携が完成したのであり、完成したものを示したのは2023年4月の特別研究会が初めてであった。つまり、それまでは私が主張する∞連携は未完成であり、社会制度として導入するには不十分なものであったのである。したがって、指摘されるべき不備があったのである。

今回の研究会は「信号系学説から刑法理論を考えてみる(序説)」をテーマにして、当会会員の岡田卓司弁護士が報告する。

岡田弁護士は2016年から当会の会員である。2016年8月から2020年1月まで、四国(愛媛県松山市)で条件反射制御法に興味を持つ方を対象にした少人数の勉強会を13回開催した。その会に岡田弁護士は、はるばる山口県から参加された。つまり、岡田弁護士は「ヒトは第一信号系ももっており、それが反射連鎖により無意識的にかつ無責任に違法行為を再現するのであるから・・・・・」という思考の反復を長年行ってきたのである。その思考の反復により、ヒトが行動する本当のメカニズムに基づいて思考することが岡田弁護士には可能な状態に至っている。

また、岡田弁護士は当会の中での議論において過去の∞連携の不備を指摘し、それに対応する形で平井が完成させた∞連携を理解している。

今回の研究会では、刑法理論が自然の摂理に対応しているか否かが議論されることになるであろう。

2024年5月
条件反射制御法学会
理事長 平井愼二

テーマ:信号系学説から刑法理論を考えてみる(序説)

【報告者】
岡田卓司
岡田法律事務所 弁護士

1.はじめに

条件反射制御法の理論は、人の行動は第1信号系(動物的な脳)と第2信号系(人間的な脳)の2つの信号系によって制御されているという仮説(いわゆる信号系学説)を前提としており、条件反射制御法の提唱者である平井愼二医師は、刑事司法体系の変革を試みようとしている。

本勉強会では、刑事司法体系がいかなる理解の下で成り立っているのかを概観し、信号系学説が前提とする人の行動理解が、刑法理論においてどのように位置付けられるかを考えることを目的とする。

2.刑法理論について~いわゆる学派の争い

※以下では、主として内藤謙「刑法総論(上)」(有斐閣)を参照し、整理を試みる。

1 大きく分けると「古典学派」と「近代学派」とに分かれる。
  簡単に図式化すると以下のとおり。

古典学派 近代学派
意思の自由 認める 認めない
犯罪とは 自由意思の外部的実現としての行為 行為者の性格(素質)と環境から生じる必然的現象
刑罰の対象 行為 行為者
刑罰を科す理由としての「非難」の中身 自由意思によって反道義的な行為を行うことを選択したことに対する道義的非難 反社会的な性格を有する者が共同体としての社会の中で生きていくために甘受すべき負担
刑罰の目的 応報・一般予防 特別予防

3.近代学派の意義

(1)背景
資本主義の発達がもたらした社会変動にともなう犯罪の激増、とくに累犯の増加に対して有効な対策をたてようとして生まれた。古典学派が犯罪と刑罰とを道義的・法的現象とみて犯罪に応じた応報としての刑罰を主張するのに対して、現に犯罪を繰りかえす人々に対する犯罪対策として意味がないと批判した。

(2)特色
 当時の自然科学の発展とも関連して、実証主義的方法により犯罪とくに犯罪者を研究し対策を立てようとした。犯罪と刑罰を単なる道義的・法的現象とみることから脱して、刑法理論を社会学・生物学・人類学等の諸科学と結びつけようと試み、刑罰の効果と限界を実証的に検討する方法に道を開き、犯罪者処遇の問題を正面から提起するとともに、実質的内容のある刑法理論を樹立しようとした。

 ある学者による分類

(ア)犯罪者の分類
「偶発犯人」                
「状態犯人」・・・・改善可能者とか改善不可能者

(イ)対応
 「偶発犯人」には、罰金刑や執行猶予制度の導入による威嚇(短期自由刑の弊害を指摘)
 「状態犯人」のうち、改善可能者については相対的不定期刑による改善を、改善不可能者に対しては終身刑ないし不定期刑による無害化

(3)課題
人権保障上の要請と矛盾する場合に、どのように解決するか。

4.信号系学説をベースとした人の行動理解との関係

第1信号系が第2信号系を凌駕している状態(以下、「第1>第2」という。)では、人がある種の違法行為を反復することは必然的な現象ともいえる。
→「第1>第2」の状態を「意思の自由なし」と考えるのであれば、近代学派と親和的な考え方と言いうる。

5.次回は、「意思の自由」についてどのように考えるべきか検討する。

以上