第12回研究会
(オンライン)
【テーマ】
性犯罪加害者の更生と司法の現状について
2024年1月22日(月)
19:00~21:00
テーマ
性犯罪加害者の更生と司法の現状について
【報告者】
上谷さくら先生
桜みらい法律事務所 弁護士
開催概要
●日程・開催時間
2024年1月22日(月)19:00~21:00
※後半30分間は意見交換
●形式
オンライン開催 Zoom(※)で行います
※Zoom(ズーム)とは無料で簡単に使えるWebサービスです。事前にアプリのインストールが必要です。
PC、タブレット端末、スマートフォンでご視聴いただけます。ご視聴にはインターネット環境が必要です。
参加に伴う通信料は参加者様負担となります。
●事務局
条件反射制御法学会事務局
受講費について
(参加費用)
●会員
1,000円
●非会員
3,000円
(2023年度会員年会費)
●会員の方
2023年度年会費未払いの方は、お申込み時に年会費を併せてお支払いください。
会員参加費に加えて、2023年度年会費 5,000円
●非会員だが2023年度の会員になって参加する方
会員参加費に加えて、2023年度年会費 5,000円
※会員資格発生後は、学会誌の最新号と会員向けメールマガジンをお送りします。
(1)参加費はお支払い後、参加者様都合の場合、返金はできかねますので、ご了承ください。
(2)ご入金確認後、研究会開催3日前までには、お申し込み時のアドレスへ参加用URLを送信します。
お支払い方法
●郵便振替
自動返信メールの記載を必ずご確認ください。
●クレジットカード
申し込みフォームより必要事項を入力しお支払いください。
※決済プラットフォームはStripe(ストライプ)を使用しています。
申込み方法について
上記タブ「申し込みフォーム」からお申込みください。
※申込完了時に申し込みフォームに記載された「連絡先メールアドレス」に自動配信されます。
自動配信メールが届かない場合は、受付が完了していない場合がございます。問い合わせ先のアドレスに照会をお願いします。
※HP申し込みフォーム以外の郵送・電話・E-mail等による申し込みは受理できませんのでご注意ください。
募集期間
参加申込受付を終了しました。たくさんのお申し込み、ありがとうございました。
・クレジットカード決済の方:2024年1月18日(木)まで
注意事項
PCの問題、WEB接続環境が整っていない等の接続に関するサポートは行っていませんので、ご了承ください。
研究会についての問い合わせ先
条件反射制御法学会事務局 担当:寺内
E-mail:crct.mugen@gmail.com
研究会当日の緊急連絡先
NPO法人アパリ 担当:尾田電話:090-3047-1573
参加申込受付を終了しました。
たくさんのお申し込み、ありがとうございました。
第12回研究会
「性犯罪加害者の更生と司法の現状について」の紹介
ご報告をくださる上谷さくら先生は、大学卒業後、毎日新聞記者を経て、2007年に弁護士になられた。ご専門は、犯罪被害者に関する刑事事件・民事事件であり、特に、性被害、DV、ストーカー、交通死亡事故に関する事案が多い。
当会が2023年9月に開催した第12回学術集会のテーマは「性的他害行為等を防ぐ試みと展望」であった。問題のある性的行動を他者に対して行う主体側の逸脱した神経活動を抑制し、理性的な思考で制御できるようにする技法の検討をするものであり、また、性的他害行為を行う主体が円滑に治療にかかわるシステムの有無も知ろうとするものであった。
条件反射制御法による性的他害行為への効果に関しては、当会ホームページにある∞メール No.31から始まる3回にわたる患者さんによる手記を是非ご覧いただきたい。
制度に関しては、刑罰は予防のために必要であろうが、それだけにとどまらず、性的他害行為が疾病性を帯びた行為であるという知識を普及させ、早く、適切な強制力を用いて治療に導入する制度を整えるべきであると私は考えている。具体的には刑事司法体系は、検挙した性的他害行為をはたらいた者に対して、第一信号系による無意識的な神経活動が原因であれば治療や訓練を科す規定、ならびに行為にさかのぼって病的な状態であるにも関わらず第二信号系が意識的に治療を選択しなかったならば刑罰を科す規定を創設することが効果的であろう。
上谷先生は性的行動に関する問題に当会とは異なる接近をされた。被害者側に寄り添い、被害者を支えようとすることに尽力されている。性的な問題行動に関係して被害者を支援する専門家と加害者を支援する専門家との会談などでは、前者となって議論を展開されている。
その上谷先生から、ご報告のテーマとして「性犯罪加害者の更生と司法の現状について」をいただいた。被害者にかかわってこられた経験から、治療において加害者にかかわってきた者とは異なる動機と視点で司法の現状を分析し、加害者への司法の現状および解決への糸口を示してくださるであろう。
2023年12月
条件反射制御法学会
理事長 平井愼二
テーマ:性犯罪加害者の更生と司法の現状について
【報告者】
上谷さくら
桜みらい法律事務所 弁護士
性犯罪は、再犯率が高いと言われています。私は、弁護士として多くの性犯罪被害者の相談を受け、刑事裁判や民事裁判、加害者との任意交渉等の代理人として活動しており、加害者の更生の難しさを日々痛感しています。
刑事裁判では、前科がない場合、何年にも亘って犯行を繰り返していても「初犯」として扱われます。正直に「数年前からやっていました」と裁判で話す被告人もいますが、多くの場合は「今回初めてです」と述べます。慣れた手口や大胆な犯行ぶりからすると、とても初めてとは思われません。検察官も裁判官も「怪しい」と思っているのでしょうが、それはあくまで内心のことであって、事実認定や量刑の重さには反映されません。また、「前からやっていました」と供述しても、それが事件として立件できない以上、「悪い情状」として多少量刑に影響はしますが、やはり「初犯」として扱われることになります。
また、刑事裁判では、加害者の家族や職場の人が証言台に立ち、「日頃は非常に真面目である」「事件について深く反省している」「今後は自分が監督するので、二度と再犯しません」という趣旨の話をするのが通例です。しかし、成人した加害者をどうやって監督するのでしょうか。
そして、被告人は「被害者への謝罪文」を書きます。「傷つけてしまってごめんなさい、二度としません」といった簡単なものが多いです。被害者はかえって「たったこれだけ?本当に私の被害の大きさが分かっているのだろうか?」と憤り、悲しみ、傷つきます。
これらの事情は、判決の中で「刑を軽くする事情」として被告人に有利に判断されます。「被告人の妻が情状証人として出廷し、監督を誓った。素直に事実を認め、被害者に謝罪をした」と判決文に書かれます。被告人が「お金がありません」と開き直って、1円も被害弁償しなくても、口先だけで「ごめんなさい」と言えば、刑が軽くなるのです。
量刑についても、前科がないと「初犯」ですので、レイプ以外はほぼ執行猶予がつきます。執行猶予中は、生活に制限はありません。「保護観察」がつけば、その間は再犯防止プログラムが実施されますが、十分ではありません。「保護観察」とは、保護観察官と保護司が犯罪者に支援と指導を行うもので、裁判所が「遵守事項」を定めるものですが、保護観察処分が付されることは稀です。つまり、単に執行猶予がついた場合は、本人の強い意思で自費で治療にかからない限りは、何もしない、ということになります。
服役すれば、刑務所内で更生プログラムが実施されます。ただし、例えば懲役10年の人でも、プログラムの受講期間は数か月に過ぎません。何もしないよりはいいのでしょうが、どのくらい再犯防止に役立っているのかは未知数です。
被告人の弁護人の仕事は、基本的に判決言渡しまでです。私選弁護人であれば、契約内容によってその後も何らかのフォローをしますが、弁護人の仕事は「無罪を勝ち取ること」「有罪であれば刑を軽くすること」であり、被告人の再犯防止のために裁判後も活動する人はほとんどいません。刑事弁護の大御所と言われる弁護士が、「再犯防止は弁護士の仕事ではない」と堂々と言っています。そのような弁護活動をしておいて、なぜ「二度と再犯しない」と言い切れるのか、甚だ疑問ですが、法曹界では常識のようになっています。判決後に、担当した被告人がどうなったのか、弁護人も裁判官も検察官もほとんど知りません。裁判官は自分の判決が適切だったのかどうか、検察官は自分の求刑が適切だったかどうか、検証する機会はありません。
法律の厳罰化だけでは性犯罪は撲滅できません。再犯を防止できれば、かなりの性犯罪が減るはずです。そのために、法曹がどう変わるべきか、どのような施策が必要なのか、具体的に考えていきたいと思います。