第2回研究会
(オンライン)

【テーマ】
ストーカー行為のメカニズムと治療
2022年5月16日(月)
19:00~21:00

テーマ

ストーカー行為のメカニズムと治療

開催概要

●日程・開催時間
2022年5月16日(月) 19:00~21:00
※後半30分間は意見交換

受講費について

(参加費用)
●会員
1,000円
●非会員
3,000円

(2022年度会員年会費)
●会員の方
2022年度年会費未払いの方は、お申込み時に年会費を併せてお支払いください。
会員参加費に加えて、2022年度年会費 5,000円

●非会員だが2022年度の会員になって参加する方
会員参加費に加えて、2022年度年会費 5,000円
※会員資格発生後は、学会誌の最新号と会員向けメールマガジンをお送りします。

(1)参加費はお支払い後、参加者様都合の場合、返金はできかねますので、ご了承ください。
(2)ご入金確認後、研究会開催3日前までには、お申し込み時のアドレスへ参加用URLを送信します。

お支払い方法
●郵便振替
自動返信メールの記載を必ずご確認ください。

●クレジットカード
申し込みフォームより必要事項を入力しお支払いください。
※決済プラットフォームはStripe(ストライプ)を使用しています。

申込み方法について

上記タブ「申し込みフォーム」からお申込みください。
※申込完了時に申し込みフォームに記載された「連絡先メールアドレス」に自動配信されます。
自動配信メールが届かない場合は、受付が完了していない場合がございます。問い合わせ先のアドレスに照会をお願いします。
※HP申し込みフォーム以外の郵送・電話・E-mail等による申し込みは受理できませんのでご注意ください。

募集期間

~2022年5月2日(月)まで

注意事項

PCの問題、WEB接続環境が整っていない等の接続に関するサポートは行っていませんので、ご了承ください。

研究会についての問い合わせ先

下総精神医療センター  担当:寺内 〈受付時間:平日9:00~15:00〉
〒266-0007 千葉県千葉市緑区辺田町578番地
E-mail:crct.mugen@gmail.com 電話:043-291-1221(内線8328)

研究会当日の緊急連絡先

NPO法人アパリ 担当:尾田
電話:090-3047-1573

第2回研究会は申込受付を終了しました。
多数のご応募をありがとうございました。

第2回研究会「ストーカー行為のメカニズムと治療」の紹介

小早川明子氏がラジオでストーカー行為の発現メカニズムと対応法を話しているのを聞いた。小早川氏の話から、そのメカニズムの概要を私は把握し、対応法に関しては小早川氏がそのラジオで話しているものでは不十分であり、条件反射制御法が効果的だと考えた。私は小早川氏と面識はなかったが、メールアドレスをインターネットで見つけ、ストーカーを入院で受け入れ、治療したいことを伝えた。

小早川氏は患者を紹介してくれた。後に聞くと条件反射制御法を疑いながらだったらしい。

まずは、女性が来た。好きになった男性への思いが繰り返して高まり、苦しく、その男性に会いに行ってしまう状態だった。病状は典型的であり、完全なストーカーであった。条件反射制御法を用いて、治療は順調に進んだ。彼女の第一信号系にあった対象の男性に接近する行動を司る反射は抑制された。従って、その男性に会いに行きたいという欲求はなくなり、我慢する必要もなくなり、会いに行くこともなくなった。

次の患者が紹介されて、入院した。男性で、病状は典型的であり、完全なストーカーであった。しかし、私は緊張した。前のケースとは異なった。治療が不成功に終われば、その患者が対象者を殺す確率は100%だと考えたからである。その患者は、日本で最も多くストーカーに対応している小早川氏に相談して、紹介された平井の病棟に来て、言われるままに治療を受けるのだから、その治療を受けて治らなかったら殺してもいいだろうという話を淀みなく、穏やかにした。私は、殺したらあなたの人生が苦しいものになるが、それにはどう対応するのかを問うたところ、答は準備されていた。彼は対象者を殺した後に、直ちに自分も死ぬのだと言った。ここには書かない他の事情からも、私が彼を治さなければ、彼が対象の女性を殺すことは確実だと考えた。

条件反射制御法を開始したところ、彼は極めて真面目に治療を行った。殺意は消えた。退院時には、平井医師の言ったとおりになったけど、牙を抜かれた狼みたいで、良い気分ではないのように言った。彼は、本当の事情を伝えて休みをもらっていた入院前の仕事に戻り、同僚を助けながら、就労を続け、数年以上を経過した。

小早川氏は、多くの場合は被害者から相談を受け、単独で上記のようなケースを含むさまざまなストーカーに会いに行く。まずそのことに驚かされる。とても勇敢である。また、反復するやりとりを延々と続ける。その忍耐には脱帽する。そして、対象となったストーカーの9割近くは小早川氏による働きかけでストーカー行為が治まる。しかし、1割強が治まりきらず、検挙等に至るか、近くに住まわすなどして、日々、見張るしかなかったという。

小早川氏は現在は、自分の働きかけで対応可能と思われるケースには過去の働きかけに加えて条件反射制御法の一部を行っている。危険性が高いストーカーは、下総精神医療センターでの入院治療が実現するようにストーカー本人および関係者に働きかけている。小早川氏がやりとりする関係者には警察や弁護士等がおり、刑事司法体系がもつ強制力を利用して、治療の提供をより確実にしてストーカーを治し、被害者の安全を守ろうとしており、関係機関との連携のあり方に関しても豊富な知識をもつ。

今回の研究会では、小早川氏が報告する焦点は、ストーカー行為が生じるメカニズムと治療である。制度の問題と展開するべき方向に関しては、今回は一部の報告に留め、また、いずれかの機会に焦点的に報告していただく。

2022年3月
条件反射制御法学会
理事長 平井愼二

テーマ:ストーカー行為のメカニズムと治療

報告者:小早川明子(NPO法人ヒューマニティ 理事長)

1990年代の後半、私はある人物から数年間つきまとわれるという経験をした。殺されるかもという恐怖で数分おきに振り返り道を歩いた。金銭による解決を試みても「二度と接触しない」の一文が気に入らないと拒否され、私はこういうことがストーカー行為というものではないかと思った。一円にもならないことに全エネルギーをかけ、不合理な理屈に正当性があると信じ言い張る。警察は相手にしてくれなかったためボディガードをつけることにし、その会社の役員が相手と対峙したことで苦闘は終わった。以来、私と同じ被害に遭っている人を助けたいと思うようになり、警備会社と弁護士と連携し1999年にストーカー被害者の救出活動を始めた。

活動を開始すると多数の相談が寄せられた。ストーカー行為のメカニズムも定義も見当たらず手探りだったが、人の人生を邪魔する者は許さない、自分がしてもらいたかったことをしようと、被害者の盾になりストーカーと向き合うことを始めた。

受けた相談の多くは恋愛の破綻を契機とするもので、被害者のカウンセラーであることを伝えて介入すれば、閉ざされていた扉が少し開いた気がするのだろう、殆どのストーカーが会話を拒否しない。ストーカーと呼ばれる側に会いに行くと私が予想していたような凶悪な人間というより虚勢を張る人間で、多くが被害者に対して「最後に話し合え」「無視するな」「約束を守れ」「嘘をつくな」「責任をとれ」などと攻撃をし、「殺す」と決めている者もいたが、実のところは「彼がいなければ生きていけない」「辛くて死にたい」などと苦しんでおり、懲らしめるつもりがストーカーを心配することになった。

ストーカーは被害者と連絡が取れなくなることに怯え、接点を失いかけるとパニックのようになる。ストーカー行為は無許可接近だが自分が悪いとは考えない。許可しない相手が悪いと考える。自分を切り捨てた相手は勝者であり悪である。「誠意」で応じるべきであり、さもなければ報復されて当然、それが違法行為になっても仕方がないと考える。ストーカーの理屈には、相手には自分を嫌う自由があることや、自分の感情は自分で処理する責任があることや、どうであれ違法行為はしてはならないという常識が欠落している。

2000年にストーカー規制法が成立し、「恋愛感情、またはその他の好意」を動機とするスト―カーには警告や逮捕が可能となった。恋愛感情や好意以外の動機を持つストーカーには適用されない。実際は親子、上司部下、ご近所同士、医師と患者など、あらゆる関係においてストーカーは存在する。私はストーカーとは特定の相手に対する関心が固着し無許可接近をする者だと考えており、加えて行為自体に固着し無許可接近をする者もストーカーに加える。

接近欲求の強さはストーカーによってまちまちで深刻度も違う。私の電話一本で被害者から離れると決めるストーカーもいれば、私に言い分を伝えようする期間が数か月から数年に及ぶストーカーもいる。私は常識を突きつけながら何百回となくストーカーとやり取りをする。途中、セラピーの要素も取り入れる。対話により思考に働きかけ、過去と未来を正しく評価できるようになるのがカウンセリングであるのに対し、セラピーは実験により「今、ここ」の感覚を体験するものである。例えば対話中、ストーカーから「『死んでやる』と伝えろ」と言われたら、「脅しの片棒は担ぎません。でも、『死にたいと感じるくらいに辛いです』と言い直すなら考えます」と返す。二つの言葉の違いは大きい。後者は自分で自分の感情に責任をとる表現である。顔を引きつらせながら言葉を改めてみると一皮むけた気分に気づく者もいるようだ。対立したまま半年もすると次第に被害者への接近欲求が弱まっていくことも多い。欲求が低くなれば自然に思考のゆがみも取れてくる。

一番の問題は、介入する間もないほど一気にエスカレートするストーカーであり、彼らは警告されても、逮捕されても、実刑になっても、被害者から離れようとしない。殺人未遂で満期出所したストーカーの殺意は消えていなかった。カウンセリングは焼け石に水、私は彼を見張るしかなかった。被害者が安全地帯に乗るためにはこうしたストーカーを無害な存在にするしかない。対話やカウンセリングが効かない危険なストーカーに対する治療を探したが、医者からは「ストーカーは精神疾患ではない、治療対象ではない」と言われた。こうした治らないままのストーカーたちを引き連れ、さまよっていた私に、2013年の秋、「治しますよ」というメールが届いた。「条件反射制御法」の開発者、平井愼二医師からだった。

最初は信じられなかった。「ストーカーは病気ではない」と、さんざん言われてきたからだ。下総精神医療センターを訪ね「条件反射制御法」について説明を受けた。「条件反射制御法」は条件づけされた望まない行動や気分を再現させなくする脳トレと理解した。最初、パブロフの学説をもとにしていると聞いてがっかりした。パブロフは条件反射を発見しただけと思い込んでいたからだ。しかし、すぐにパブロフを正しく理解していなかったことが分かった。パブロフが発見したのは動物と人間のすべての行動原理だった。

脳には二つの中枢がある。一つは「第一信号系」で、生命を保ち次世代に繋ぐ生理的行動(防御・摂食・生殖)を無意識的に再現させる司令塔。もう一つは「第二信号系」で、意識的に思考する、ヒトだけがもつ理性的な司令塔だ。恋愛型のストーカーのメカニズムは次のようになる。異性からの視覚刺激は、第一信号系にある生殖本能を刺激し、ヒトにおいて接近する行動を生じさせる。第二信号系は行動を計画的に進めようとし、対象の異性が拒否の様子を見せれば距離をとろうと考える。ところが第一信号系が過剰に作動すれば、第二信号系による行動制御が不能となり、時に破滅的な行動にも至る。その第一信号系の活動を訓練により弱くし、あるいは中断させ、最終的に行動制御を可能にするのが「条件反射制御法」だ。第二信号系が司る思考様式や世界観と関係なく誰に対しても効くと聞いてワクワクした。

しかし、「さあ、ストーカーをどんどんと連れてきてください」と言われ、絶句した。平井医師の患者は主として薬物やアルコール、万引き、ギャンブル、放火、摂食障害と多岐にわたるが、ストーカーの患者はまだ一人もいなかったのだ。不安はあったが自信に満ちたその明るい顔を思い出し、翌週に出会ったストーカーの女性に治療を勧めることにした。

女性はある作家をネット上でつきまとい、地方から頻繁に上京し作家の自宅を特定、押しかけて警告を受けていた。「先生(作家)と会いたくて仕方ない。私が悪い事は分かっています。でも止められない。先生は私の神様なんです。」と声を震わせて泣き、入院を即決した。

治療では、やらないと決めた行動を生じさせていた神経活動を動かなくする脳トレを行う。脳トレでは標的の神経活動が生じたときに、それを止める「制御刺激」を作る。さらに標的の神経活動を弱めるため、標的の神経活動を疑似動作や閉眼しての想像で再現するが、「生理的報酬」を生じさせないことを繰り返す。「生理的報酬」とは、生きることに成功した行動を司った神経活動を強化し、定着させるものである。「生理的報酬」がない神経活動、つまり生きることを支えなかった神経活動は、進化の掟に従って、弱まっていく。私と何百回となく対話をしたことは、ストーカーにとっては「生理的報酬」のないストーカー行為だった。進化の掟に従って接近欲求が落ちたのだと腑に落ちた。

驚いたのは3か月後に退院した時だった。私は「つきまとわないと決めました」「感情のコントロールをします」程度のことを言ってくれるかなと期待していたが、そうではなかった。女性は「そういう人もいたって感じです。関心はなくなりました。神様? 今は砂粒くらいかな 顔も良く思い出せないです」と言ったのだ。カウンセリングをしたストーカーからは決して聞けない言葉だった。これこそ治療なのだと感じた瞬間だった。

以来、30名近くのストーカーを入院に繋げた。退院後も脳トレをするが、治らないから治療を継続するのと、治っているからその状態を維持する治療を続けるのとでは大違いだ。維持する治療をさぼらなかった人で再発した人はない。被害者への関心が落ちると脳に空き容量ができるためか、ほぼ全員が復職した。私は着くべき港を見つけたのだった。

相談から始まるストーカー対策が目指すところは何よりも初犯防止である。直ちに手を打つ必要がある。司法は常に過去を扱うがストーカー規制法は「つきまとい」段階の加害者に対して「これ以上は犯罪になる」と警告する初犯防止を意図したありがたい法律である。それでも中には警告を無視し、あるいは軽微な「つきまとい」もなく警告も受けずに重大な犯罪に向かう者もいる。ここに司法の限界がある。取り締まるだけでなく治療が対策として必要になる。

ストーカー行為は、今後、ますます、内在化、凶悪化、スピード化するだろう。被害者が警察に相談する間もなく命を落とし、ストーカー事件と目されることすらない事件も起きている。家族が予兆に気づき精神保健行政に相談することがあっても強制的に入院治療につなげることは難しい。問題の一つは、大方の精神科医療施設では行動制御能力の障害だけでは疾患と見なさず入院もさせないことだ。

警察は2016年からストーカーを医療に繋げる努力をしているが、任意であるために真に繋がるべきストーカーは繋がらない。治りたいと思えない加害者こそ危険であると考えれば、危険なストーカーには禁止命令の際に治療を課すことも考えるべきではないか。医療へのつなげ方に並んで大事なのはどの治療法に繋げるかである。2012年の逗子ストーカー殺人事件の加害者は3度も入院したが治らず犯行に至った。ストーカー対策の先進国であるオーストラリアの精神保健機関でさえ、「確率された治療法はなく」(警察庁平成26年度の調査研究)とする中、「条件反射制御法」は日本が世界に誇るストーカーを無害化する治療法だと私は確信している。

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