第5回研究会
(オンライン)
【テーマ】
刑罰と援助が補い合う∞連携の構想と展開
2022年8月19日(金)
19:00~21:00
テーマ
刑罰と援助が補い合う∞連携の構想と展開
- 治療側の者は薬物乱用を通報するべきか否か? -
開催概要
●日程・開催時間
2022年8月19日(金) 19:00~21:00
※後半30分間は意見交換
受講費について
(参加費用)
●会員
1,000円
●非会員
3,000円
(2022年度会員年会費)
●会員の方
2022年度年会費未払いの方は、お申込み時に年会費を併せてお支払いください。
会員参加費に加えて、2022年度年会費 5,000円
●非会員だが2022年度の会員になって参加する方
会員参加費に加えて、2022年度年会費 5,000円
※会員資格発生後は、学会誌の最新号と会員向けメールマガジンをお送りします。
(1)参加費はお支払い後、参加者様都合の場合、返金はできかねますので、ご了承ください。
(2)ご入金確認後、研究会開催3日前までには、お申し込み時のアドレスへ参加用URLを送信します。
お支払い方法
●郵便振替
自動返信メールの記載を必ずご確認ください。
●クレジットカード
申し込みフォームより必要事項を入力しお支払いください。
※決済プラットフォームはStripe(ストライプ)を使用しています。
申込み方法について
上記タブ「申し込みフォーム」からお申込みください。
※申込完了時に申し込みフォームに記載された「連絡先メールアドレス」に自動配信されます。
自動配信メールが届かない場合は、受付が完了していない場合がございます。問い合わせ先のアドレスに照会をお願いします。
※HP申し込みフォーム以外の郵送・電話・E-mail等による申し込みは受理できませんのでご注意ください。
募集期間
~2022年8月3日(水)まで注意事項
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研究会についての問い合わせ先
下総精神医療センター 担当:寺内 〈受付時間:平日9:00~15:00〉
〒266-0007 千葉県千葉市緑区辺田町578番地
E-mail:crct.mugen@gmail.com 電話:043-291-1221(内線8328)
研究会当日の緊急連絡先
NPO法人アパリ 担当:尾田電話:090-3047-1573
第5回研究会は申込受付を終了しました。
多数のご応募をありがとうございました。
テーマ:援助と取締処分が補い合う∞連携の構想と展開
報告者:平井 愼二
私は下総精神医療センターの反復行動に専門的に対応する部門で1989年4月から働き始め、2年間の出張期間だけは離れたが、現在も同部門にいる。
当初は、規制薬物乱用者への対応が主であり、取締機関に通報すれば検挙されるはずの規制薬物乱用直後の者を、精神科医療が治療を役割にしていることを理由にして、通報しないことを選択して診療をしていた。しかし、不十分であると感じていた。入院治療を終えた患者が、数ヶ月ほどして、再び覚醒剤を使って入院してくることが反復したのである。そのことから、規制薬物を購入して製造と販売にかかわる非合法組織を経済的に潤わせ、規制薬物を乱用してやせ細り精神病になった者に対して、私の決定により精神科医療を提供して再び同じ行動をできる状態に戻し、社会に損害を与えていると感じていた。
一方で、私が医療の場で対応する規制薬物乱用者を取締機関に通報する態勢をもてば、検挙を恐れて規制薬物乱用者は私に寄りつかなくなり、あるいは受診した者を通報すれば、検挙等により疾病性へのはたらきかけは中断され、従って、疾病から本人を救わない。また、その者が後に社会内で再び、薬物の使用に走り、健康を害し、薬物を乱用することを放置し、社会に損害を与える可能性を増すのである。それらのことから、精神科医療を提供できる私が規制薬物乱用者を取締機関に通報することは社会に貢献しないことも知っていた。
つまり、通報しても、通報しなくても、不利益を生じるのである。
どちらも選択せずに臨床を行うことは不可能であり、どのように対応するべきかに悩んでいるときに、ドラッグコートの情報を得た。ドラッグコートはさまざまな形があるが、基本的な流れは検挙した薬物乱用者に対して、治療的に対応する機会を提供するものである。
そのドラッグコートを一部の者は、刑事司法体系が刑罰より治療の提供を重要視する体系であると判断し、高く評価していた。
私は異なる考えをもった。規制薬物乱用者に治療を提供することを行ってきた経験から、治療は万能でないことを知っていたからである。刑罰より治療の提供を重視するべきでなく、治療も刑罰も同様に必要であると考えたのであった。また、ドラッグコートのシステムの中心は刑事司法体系であるが、治療体系も独立して存在するはずであり、バランスが不良であると感じた。
ドラッグコートの考え方は必須であるが、体系としては不完全である。そこで私は図を描いた。社会を表す枠を大きく描き、その中の左側に治療体系を、右側に刑事司法体系を描いた。社会から薬物乱用者が治療体系に入って、改善が進み、薬物摂取反復が治ればよい。また、社会から薬物乱用者が刑事司法体系に入って、刑罰を受けて、懲りて、薬物をやめればよい。いずれの領域の単独の作用でも効果が完全ではないが生じる。社会内にいる規制薬物乱用者が治療体系に入りその作用を受け社会に戻る流れを治療体系の上から下に向かう①の線で示した。刑事司法体系に関しても同様の流れを②の線で示した。これらの単独領域での流れは現在も存在する。
ドラッグコートは検挙した者を、刑事司法体系側から援助側に向かわせる作用をもち、2つの領域を連携させる要素である。それを、刑事司法体系の下部から治療体系の上部へ向かう斜めの線④で示した。刑事司法体系に不足する治療的はたらきかけを治療体系の作用により補うものであり、そうあるべきである。
しかし、そこまで描くと、作用を表す線は①と②、④となり、バランスが悪いのであった。そのバランスを整えるためだったと思う。私は、④のラインに対照的に、治療体系の下部から刑事司法体系の上部に向かう斜めの線③を書き入れた。バランスが整ったと感じた。その線③がもつ作用は、治療体系に不足する法の抑止力を処遇に設定するものであり、そうあるべきである。
規制薬物乱用には反復傾向がある。規制薬物乱用は犯罪性を必ずもつはずであるが、反復しているならば疾病性も確かにもつ。対応する体系は規制薬物乱用にある犯罪性にも疾病性にも対応しなければならず、その連携を構成するものが、ここまで示した線①から④で示された治療体系と刑事司法体系の態勢である。それら4本の線を繋げて角を滑らかにすると∞(むげんだい)になるので、ここに示す連携を後に∞連携と名付けた。
治療側の者は薬物乱用を通報するべきか否か?という問いには、ここまで示した連携の要素に従うことで答えが出る。援助側職員が、規制薬物を乱用した直後の者に対応した際でも、まずは①に従い、通報せず、受け入れ、単独で可能な治療的対応をする。また、その後は②に従い、最終の規制薬物使用から2週間を経て、対象者の体内から規制薬物とその代謝物の排出が終わり、証拠がなくなった時点で取締職員と面接することを対象者に治療側の職員が勧め、対象者の同意が得られれば取締職員に連絡し、他領域の要素である法の抑止力を処遇に設定する。
薬物乱用に対応する連携は、さまざまな専門職の作用を摩擦しないように組み合わせて成立させることがよい。そうすると効果的になる。連携体系においては各専門職の役割を明確にして、ある専門職の役割は、その専門職が果たさなければならないだけでなく、その他の役割をもつ専門職が賛同し、期待するべきものである。仮にある専門職がその役割を果たさないならば、他の専門職は、その専門職の役割の怠りを非難するべきである。
従って、刑事司法体系の専門職は、治療体系の職員がまずは通報しないことに、賛同し、期待し、仮に治療体系の専門職が対象者の規制薬物使用を通報したならば、それを非難するべきである。また、治療体系側の専門職は、刑事司法体系の専門職が検挙することに賛同し、期待し、仮に刑事司法体系の専門職が対象者の規制薬物使用を検挙しようと努めなかったならば、それを非難するべきである。