第19回研究会
(オンライン)

【テーマ】
進化精神医学からみた現代社会と精神病理
- 進化適応環境・自己家畜化・ナラティブの視点から -
2026年2月24日(火)
19:00~21:00

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テーマ

進化精神医学からみた現代社会と精神病理 - 進化適応環境・自己家畜化・ナラティブの視点から -
●報告者
髙野 覚先生
(医療法人社団明雄会 本庄児玉病院)

開催概要

●日程・開催時間
2026年2月24日(火)19:00~21:00
前半1時間20分は報告、後半40分間は意見交換の予定です。

●形式
オンライン開催 Zoom(※)で行います
※Zoom(ズーム)とは無料で簡単に使えるWebサービスです。事前にアプリのインストールが必要です。
PC、タブレット端末、スマートフォンでご視聴いただけます。ご視聴にはインターネット環境が必要です。
参加に伴う通信料は参加者様負担となります。

●事務局
条件反射制御法学会事務局

受講費について

(参加費用)
●会員
1,000円
●非会員
3,000円

(2025年度会員年会費)
●会員の方
2025年度年会費未払いの方は、お申込み時に年会費を併せてお支払いください。
会員参加費に加えて、2025年度年会費 5,000円

●非会員だが2025年度の会員になって参加する方
※2025年度は2025年4月1日から2026年3月31日です。
会員参加費に加えて、2025年度年会費 5,000円
※会員資格発生後は、学会誌の最新号と会員向けメールマガジンをお送りします。

(1)参加費はお支払い後、参加者様都合の場合、返金はできかねますので、ご了承ください。
(2)ご入金確認後、研究会開催2日前までには、お申し込み時のアドレスへ参加用URLを送信します。

お支払い方法
●郵便振替
自動返信メールの記載を必ずご確認ください。

●クレジットカード
申し込みフォームより必要事項を入力しお支払いください。
※決済プラットフォームはStripe(ストライプ)を使用しています。

申込み方法について

下記注意事項をご確認いただき、お申し込みください。
・申込完了時に申し込みフォームに記載された「連絡先メールアドレス」に自動配信されます。
・自動配信メールが届かない場合は、受付が完了していない場合がございます。問い合わせ先のアドレスに照会をお願いします。
・HP申し込みフォーム以外の郵送・電話・E-mail等による申し込みは受理できませんのでご注意ください。

参加申込フォーム

募集期間

・郵便振替でお支払いの方:2026年2月13日(金)まで
・クレジットカード決済の方:2026年2月19日(金)まで

注意事項

PCの問題、WEB接続環境が整っていない等の接続に関するサポートは行っていませんので、ご了承ください。

研究会についての問い合わせ先

条件反射制御法学会事務局(ライフクリニック内) 寺内
TEL:043-215-7070
E-mail:crct.mugen@gmail.com

第19回研究会「進化精神医学からみた現代社会と精神病理」の紹介

昨年6月に開催された精神神経学会のシンポジウムにおいて、ヒトが思考する機序を含む内容について報告したところ、会場で髙野先生よりお声がけをいただいた。後に私から改めてご連絡を差し上げたところ、ご返信をくださった。

髙野先生は進化精神医学を専門とされており、最近では精神神経学雑誌(第127巻2号、2025年、89-96頁)に進化に関する論文を発表されている。
私は臨床家として逸脱して同一の神経活動が反復する病態に専門的に対応してきた。患者に見られた反応の変遷と検討から、生物の出現からヒトへの進化の過程を推論したが、それに対する他者による見解は十分に把握できていない。

進化の理論は、後に示すように精神科領域の技法と刑事司法制度において極めて重要であり、また、おそらくヒトを対象とするあらゆる業務において重要である。そこで、本研究会で進化を主題として取り上げ、理解を深めたいと考えた。その分野の専門家である髙野先生に研究会でご報告をいただくことをお願いしたところ、ご快諾をいただいた。

研究会当日は、髙野先生から人類の自己家畜化や進化的ミスマッチ等に関するご報告に加えて、是非とも、私が推論したヒトの中枢への進化についてもご意見を賜りたいと考えている。

私が条件反射制御法を開始し、進化について検討するようになった経緯は次のようなものである。

覚醒剤の売人に路上で遭遇すると排便したくなるという患者の話から、調査を経て、条件反射が覚醒剤の摂取を反復する病態を成立させていることを把握した。後に条件反射制御法と呼ぶ技法を未熟な形ではあるが2006年に開始した。

この技法は、同一の行動あるいは不快な身体症状や思考を逸脱して反復させる反射の連鎖に働きかけるものである。当初は覚醒剤乱用者に条件反射制御法を用いた。覚醒剤を摂取する行動を司る反射連鎖に、刺激を与えて、作動させ、しかし、強化効果を生じさせないことを反復したところ強い効果が生じた。

過去には困難であった欲求の抑制を、効果的にできるようになった。その理由を求め、検討を重ねた結果、次のような結論に至った。

地球上に生まれた生物種が環境とのやり取りにおいて生き抜き、動物になってからは、過去に生理的成功に至ったときに、その時点までの行動を構成した反射が、その行動時の刺激があれば、機械的に再現する現象で生き抜き、進化して現れた一種がヒトである。覚醒剤やアルコールの薬理作用は、防御、摂食、生殖に成功して生き抜いた時と同様の強化効果を生じる。それらの物質の薬理作用は、進化のシステムに侵入するように作用して、強化効果が生じるまでの行動を再現させる反射を強化するのである。したがって過去に強化された反射連鎖は、逆に、それを作動させて終末に強化効果がない現象を反復すれば、抑制されるのである。

当初、物質使用障害に用いた条件反射制御法は後に、心的外傷後ストレス障害や病的窃盗、性的他害行為等でも効果を得られるようになった。それらの病態は、生命を支える基本的な行動である防御、摂食、生殖を成立させる行動が、現代において過剰に生じたものである。その把握に従って技法の細部を整えたところ、効果は高まった。

条件反射制御法が焦点とするのは、ヒトの中枢作用の内、四足歩行までの動物の中枢作用に近い、過去の生理的成功行動を反射連鎖で再現する作用である。ヒトが経てきた進化の重要性を感じさせるものであった。しかし、その後、長期に渡って、過去の行動を反復する作用のみからどのようにして未来の行動を創造する作用ももつように進化したかを、把握できていないままであった。

さて、私の研究テーマの一つは、反復する同一の違法行為に対する援助と取締の連携である。当会は毎年学術集会を開催しており、2022年9月開催の第11回学術集会で、私は行動制御能力の判定法について報告した。当時の私は、パヴロフの概念である二つの中枢システム、すなわち第一信号系と第二信号系を用いた比較によって判定できると主張しており、その説明では不十分であるとの指摘を受けた。私は、行動制御能力という社会と生理の両方が関係するものを、その発現機序を明確にすることなく、1人のヒトが作った言葉に過度に頼っていたことに気づいた。指摘を受けた不明確な部分は、四足歩行の動物が直立二足歩行のヒトになる際の中枢における進化を把握していなかったことが原因となっていた。

私はその後、ヒトになる動物が思考する中枢をどのように獲得したか、どのように作用するかを探求し、次のように推論した(意思と呼ばれる現象 条件反射制御法研究vol.12, 38-47)。

四足歩行までの動物は自然とほぼ密着しており、環境からの刺激に反応して反射が作動して、直ちに動作等に至り、その現象が連続して行動する群が生き残った。

進化した群の一部はときに二足で起立し、主体の支配が強い環境で前肢が対象物に変化を加える動作の連続で生理的成功に至った。この現象で中枢作用の結果が次の反射の刺激として強化されて反射連鎖が生じ、また、多様な変化に適応して反射連鎖に分岐と合流が生じて反射網と呼ぶべき構成が生じる機構が成長した。

ヒトでは反射網に環境と中枢から刺激が入り、複数の反射連鎖が作動して行動を表出する作用を生じる。それらの行動が摩擦するものであれば表出は阻害されるが、中枢内で複数の反射連鎖の作動は続き、競合する。また、運動野への伝達を開通させる作用と阻害する作用が競合する。反射の強度は過去の生命活動により設定されており、いずれの競合でも強い反射が機械的に行動を司る。この競合で複数の未来を体験し、思考となる。運動野に伝達が開通すれば最強の反射に至る反射連鎖が司る行動が表出し、阻害が持続すれば中枢内で反射連鎖の競合が続く。

上記のように反射のみで思考の機序を表すことができた。そのような思考において、社会を支える法の文字列からの刺激をヒトが知覚し、その刺激が反射網を作動させて、法の理解に至り、自分の行動の違法性を判断する。違法行為に対する反射連鎖の促進作用と反射網が生じる制止作用は競合し、その優劣が行動制御能力の有無を分けるのである。この行動制御能力の判定法により、援助と取締の連携の構想が完成したのであり、それを可能にしたのが、四足歩行の動物から直立二足歩行のヒトへの進化における中枢作用の変化に関する推論であった。

不安、抑うつ、行動の逸脱した反復等は、おそらくはヒトが特異的にもつ精神作用であろう。四足歩行までの動物の中枢は、環境由来の神経活動のみを刺激として動作等が表出する現象の反復で一連の行動が生じる。一方、直立二足歩行のヒトは、環境と中枢の両方からの神経活動を刺激として行動が生じる。中枢内で反射が連鎖し、多様な方向に分岐し、合流する基盤をもつ進化により、やっと他者を思いやり未来の行動を計画できるようになった。その能力が不安や抑うつ、行動の逸脱した反復等も生じると私は考えている。

2026年1月
条件反射制御法学会
理事長 平井愼二

進化精神医学からみた現代社会と精神病理 – 進化適応環境・自己家畜化・ナラティブの視点から –

【報告者】
医療法人社団明雄会 本庄児玉病院
髙野 覚

進化精神医学(Evolutionary Psychiatry)は、精神疾患を発症機序などの「至近要因」のみならず、その脆弱性がなぜ進化の過程で淘汰されずに残存してきたのかという「究極要因」から問い直し、精神病理を進化的適応の文脈で再解釈する学問領域である。本発表では、進化適応環境(Environment of Evolutionary Adaptedness:EEA)と現代社会との乖離、ならびに人類の自己家畜化という視点を軸に、精神疾患理解と臨床実践への含意を検討する。

ヒトの精神機能は、約20万年にわたる狩猟採集生活の中で形成されてきた。小規模で血縁中心の集団、食の分配、共同保育、身体活動を伴う生活環境は、情動調整や社会的認知の前提条件を形作ってきた。しかし農耕革命以降、とりわけ近代以降の急速な社会変化は、これらの前提条件との間に大きな乖離を生じさせた。この「進化的ミスマッチ」は、不安、抑うつ、依存、孤立といった現代的精神病理を理解する上で不可欠な理論的枠組みである。

不安や恐怖は、本来、危険回避のための適応的警告システムであり、生存率を高めるために偽陽性(誤警報)を許容する「煙探知機の原理」に基づく。しかし現代社会では、物理的危険が激減する一方で、社会的評価や排除への脅威が慢性的に喚起される。SNS や監視的管理環境は、進化的に形成された社会的警戒機構を持続的に作動させ、不安や抑うつの遷延化を招いている。

この文脈で注目されるのが、人類の自己家畜化(self-domestication)である。集団内暴力の抑制と協調性の選好は、高度な社会性と言語能力をもたらした一方で、同調圧力や過剰な自己抑制、精神疾患への脆弱性を随伴させた。統合失調症をはじめとする重篤な精神病理は、言語や社会認知に対する強い淘汰圧の「崖型トレードオフ(cliff-edged trade-off)」の帰結として理解し得る。

また、うつ状態も単なる機能不全ではなく、敗北時の服従、エネルギー温存、援助希求などを目的とした適応反応としての側面を有していたと考えられる。問題は、現代の管理社会が本来必要な「撤退」や「回復」の余地を十分に許容せず、適応反応を病理として固定化させている点にある。これは、飼育下の動物に見られる異常行動と、それに対する環境エンリッチメントの関係とも類比的に理解される。

神経発達症(ASD、ADHD など)についても、進化精神医学はそれらを欠陥ではなく、祖先環境における役割分担や探索戦略の多様性として再定位する視点を提供する。現代の均質化された教育・労働環境とのミスマッチが、これらの特性を「障害」として顕在化させている可能性がある。

臨床において重要なのは、症状を個体内の異常に還元せず、進化史的背景と現代環境との相互作用として捉え直すことである。この視点は、セルフスティグマを軽減し、患者自身の経験を再構成するナラティブな対話の基盤となる。進化精神医学は、生物学的精神医学と心理社会モデルを架橋し、因果と意味を統合するメタ理論として、現代精神医学に新たな臨床的視座をもたらし得る。