∞メール No.28

∞メールの全体は コチラ からダウンロードできます。
一部を抜粋したものを下に掲載しています。

会員の皆様
季節は春にかわり、日増しに暖かくなってきましたが、新型コロナウイルス感染症の流行はまだまだ収束に向かわず、気分は春になりきれません。そのような中でも反復する行動に囚われた方の一部は、問題の行動から離れるようさまざまな努力をしています。
反復する行動から離れるためには第一信号系に対しては条件反射制御法を受け、また、問題の行動が違法であれば第二信号系に強力に働きかけるために取締職員との面接を行うことが効果的です。それらの両方を対応の方法として設立の当初から用いている施設を今回の∞メールで紹介します。
それらの方法を両方とも行っている施設はまだ珍しく、また、設立の当初から行っているのは他にはまだないかも知れません。
いずれは反復する行動に囚われた者の回復を支援する施設は、上記の2つの方法を標準的な支援方法としてもつべきであると考えています。

平井愼二

回復支援施設の紹介

メビウス千葉

施設長 鈴木康之
(2021年2月19日寄稿)

メビウス千葉は、下総精神医療センターの平井愼二医師による条件反射制御法と∞連携に感銘を受け、2013年8月26日、市民活動団体として設立した入寮型の回復支援施設である。2016年12月27日には特定非営利活動法人になった。
当施設では、下総精神医療センターに入院して条件反射制御法を受けた人たちの自立支援を行っており、これまでに95人を受け入れ、現在32名が在籍している(2020年7月31日時点)。
当施設は多くの施設と同様に作業療法や生活訓練などを行い、生活支援や就労支援を行う。また、当施設を特徴づけるのは、入寮者が条件反射制御法の維持作業を実施することを主なプログラムにしていることである。
毎朝、ミーティング時に、前日に行った条件反射制御法の維持作業の記載をスタッフが確認する。その後、社会内での疑似万引きや各部屋での物質使用の疑似や制御刺激にスタッフが同伴する。自由になる時間で、入寮者は想像や入院中に書き出した体験の読み返しと20単語書き出しを行う。また、スタッフは個別面談を行って、維持作業が誤りなく実施されていることを確認し、必要な指導を行っている。
薬物乱用を繰り返していた入寮者については、下総精神医療センターに毎月訪れる麻薬取締官と面接している。現在は新型コロナウイルス感染症対策のために、一時的に面接はなされていない。
利用者が再犯せずに社会の一員として生活できるようになることを第一の目標としているが、残念ながら入寮者が覚醒剤等の規制薬物を使ってしまうことがある。その場合、当施設からは取締職員には連絡しない。規制薬物を使った入寮者に下総精神医療センター受診を促すと、その者は主治医も取締職員に連絡しないことを知っているので、円滑に受診する。その後、2週間ほどたった頃には尿中に覚醒剤等が検出されないことを入寮者に説明すると、円滑に麻薬取締官との面接を受け入れる。
薬物乱用を繰り返す人には欲求を制御する治療は必須であり、それに加えて生活訓練を必要とする者もいる。それらにさらに、取締機関がもつ法の抑止力を処遇に設定することで、対象者の回復はより確実になる。
当初は下総精神医療センターを退院した人だけを受け入れることを想定して開始したが、現在では矯正施設出所者あるいは逮捕され勾留から保釈の形で社会内に戻った人も、下総精神医療センターに入院してCRCTの治療を受けることを前提に受け入れている。
入寮者は精神科の疾病をもつのでここまで示したように精神科医療との連携を緊密にとるほか、弁護士・保護観察官・保護司・警察職員等のかかわりも得て、支援を行っている。