∞メール No.11

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一部を抜粋したものを下に掲載しています。

CRCT利用施設から

新潟刑務所における条件反射制御法の展開

新潟刑務所 教育専門官 田村 勝弘
(2018年12月8日 寄稿)

 私は平成23年4月から新潟刑務所の教育専門官として勤務しています。その前は少年院の教官でした。性非行を担当したことは結構あったのですが、実のところ、薬物をはじめとする嗜癖に対する指導は、新潟刑務所に異動してから始めました。

新潟刑務所に異動して薬物担当になり正直、何をすればいいのかわかりませんでした。だからこそ、すぐに研修を受けるチャンスがあり条件反射制御法に出会うことができたのです。平成23年6月、第2回条件反射抑制療法研修会に参加することができました。その1年後、第1回学術集会にも参加しました。「条件反射制御法は面白い。刑事施設でもおまじないなら実施することができるかもしれない。」と考え、指導を乞うべく平井先生に直接電話をしました。研修会に使用したパワーポイントのデータをそのまま送ってくれるように依頼したところ、一旦は断られましたが、何回か連絡したところ、刑事施設で条件反射制御法を取り入れてみたいという熱意を認めてくれ、パワーポイントのデータと他の資料を送ってくれました。

平成24年10月、特別改善指導薬物依存離脱指導で条件反射制御法「制御刺激(当時は負の刺激)」を実施開始しました。刑事施設で本格的にプログラムとして条件反射制御法を実施したのは、ここが出発点ではないかと思います。このプログラムでは、6か月間ひたすら制御刺激を続けました。受講者からは「なんか薬物に囚われることがなくなって、とてもいい感じだ。」というコメントを笑顔でしていたことを記憶しています。

当然ですが、受刑者の嗜癖は薬物に限ったことではありません。様々な嗜癖に対応するべく、平成25年9月に一般改善指導として条件反射制御法を開始しました。平成26年11月には、下総精神医療センターで実地研修を受講することができ、改めて条件反射制御法を学ぶ機会を得た後、現在は薬物、アルコール、ギャンブル、窃盗、たばこ、気分、そして性嗜好に対して、条件反射制御法を受講を希望する者に対して実施しています。

現在も矯正施設のプログラムは集団で実施する認知行動療法がメインです。もちろん私も認知行動療法を取り入れて指導を担当しています。私の勤務する刑事施設は、犯罪傾向が進んでいる受刑者(主に累犯者)を収容する刑事施設です。刑事施設のプログラム(主に認知行動療法)はすでに以前の受刑でも受講経験があってもまた事件を起こして刑事施設で生活しているので、改善指導は効果がないと感じ、モチベーションは低い者が多いです。また、嗜癖ができない自由を制限されている塀の中の環境で、認知行動療法的には指導がしにくいことが多々あります。たとえば、嗜癖に対する引き金を避けるというイメージの場合、現在の環境ではできない状況だと理解してしまっているために、渇望がわかない、ということは改善されたと思い込んでしまうことがあります。嗜癖を考えることさえなくなってしまうのです。
そこで、やはり条件反射制御法です。嗜癖ができない安心安全な場所で制御刺激を作り、社会復帰後の危険な以前と同じような環境に戻った時もブレーキになるのです。また、疑似を実施すると予想以上に激しく反応し、とても「嬉しそう」に取組みます。新潟刑務所では、道具を使う場合は教室で、写真等を見ながら疑似を行う場合は、写真をワークブックに張り付けて居室でも実施します。想像は、話を聞けるときはじっくりと聞き、部屋で取り組むときは作文を書いてもらいます。おおよそ4か月で、維持ステージに移行して終了です。

刑事施設のプログラムはグループが基本です。条件反射制御法は、グループでも個別でも実施できます。グループで薬物事犯者に対する条件反射制御法を10名で開始した時は、同じように疑似、想像へと進んでいくので、面接がとてもあわただしかった記憶があります。
それらの新潟刑務所での条件反射制御法の取り組みについて、第2回条件反射制御法学術集会から今年の第7回大会まで、連続で報告しています。日本矯正教育学会をはじめとして、新潟刑務所の条件反射制御法を数々の学会でも発表をしています。他の刑事施設からも当所の実践を見学に来ていただけるようにもなりました。条件反射制御法の研修・講習にも多くの矯正職員が参加しているようです。刑事施設という制約の多い中ではあるものの、条件反射制御法実施を難しくとらえることなく、各施設の実情の中でもできるところから始めていくことが、必ず彼らの再犯防止につながると信じています。

刑事施設の実践について質問などがありましたら、お気軽にご連絡ください。