∞メール No.25

 
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一部を抜粋したものを下に掲載しています。


会員の皆様
ご無沙汰しております。
前回の∞メール発信は今年8月9日でしたので、ずいぶん間があきました。申し訳ありません。
この間に、札幌市と鹿嶋市で研修会があり、また、第九回学術集会も開催されました。学術集会はZOOMを用いた初めてのものでした。
学術集会に先立って開催された総会で皆様にお伝えしたように、学会の会計報告が遅れております。集中的に理事会を開催して、会計の問題等の解決を進めております。
さて、新型コロナウイルスは収まらず、さまざまな変化を求められています。当会の学術集会のようにウェブ会議が多く開催されるようになり、多くの方が慣れてきました。今後、参加者が集まる会議よりウェブ会議が主流になると考えられます。条件反射制御法学会も基礎を固めながら、状況に柔軟に対応していきたいと考えます。

今回の∞メールへの投稿は前回に続き、聖明病院の職員の方からです。お二人は一緒に下総精神医療センターの実地研修を受講されました。
静岡で条件反射制御法が普及する発信拠点に聖明病院がなることを期待いたします。

平井愼二

下総精神医療センターでのCRCT実地研修を受けて

CRCTと出会ってイメージが確立し確信に変わった5日間

医療法人十全会 聖明病院
看護師 深瀬 緑
(2020年2月6日寄稿)

私が勤務する病院長から「4月から痴漢と万引きの人を対象に条件反射制御法を病棟で取り入れたい。研修に行くように。」と言われた。
性嗜好障害やクレプトマニアの患者さんは私の勤務する病棟では少数であるが、入院されている。しかし、現場ではどう関わってよいか戸惑っているのが現状であり、そのために導入したいとの考えは理解できた。
「条件反射制御法?」この言葉すら知らなかった私は、ネットで検索してみた。おまじない、4つのステージ、制御刺激、疑似、想像、維持・・・洗脳だろうか、宗教だろうかと、なんだか怪しげな治療法としてのイメージを持った。
まず、2020年1月11日、大阪で開催された第5回条件反射制御法関西研修会に参加した。1日研修を通して、ヒトの行動原理について少しずつわかりはじめてきた。
物質摂取行動は最終部分も主に後天的反射に司られるので、その行動を抑制する疑似と想像は最終行動まで再現して効果が生じることは理解できたが、痴漢や万引きは本能行動の過作動で生じ、それらの行動を司る反射連鎖は先天的反射が本流となるため抑制が生じ難いと知り、まずは物質使用障害の患者に導入し、成功体験を積んだ方がよいのかと考えた。
どちらにせよ、勤務する病棟で導入することはとてもイメージできず、こういう治療法があるのかと知識を得るに留まっていた。2週間後に下総での実地研修へ行く予定だったので、何かわかるのではないかと書籍を読んだりしてみても、イメージは湧かなかった。
2020年1月27日から1月31日の5日間、国立病院機構下総精神医療センターで条件反射制御法実地研修を受けた。
疑似の同伴をしたり、患者さんにテストを施行したり、制御刺激や想像の設定の見学など、この実習でしか得られない貴重な体験をさせてもらった。

印象に残っているのが、平井先生が痴漢の疑似の設定をしているところを見学させてもらったことだ。患者Aさんに対して、初回は最終まで、2回目は中断を行った。疑似を行う度に観察票に生じた反応を選択してチェックを入れるのだが、Aさんは反応がなかったことを示すところにチェックを入れた。「治療を進めたいから緊張はしています。」とAさんは無表情で語った。平井先生とAさん、私たち研修生とAさんの自室へ帰ったとき、「平井先生、後で話したいことがあります。」と実習生には知られたくないような様子があったことが気になった。
翌日になって、Aさんは初回の疑似で興奮し、昨夜は眠れず、眠剤を希望し、服用されたと聞いた。反応は出ていた。平井先生は疑似の回数を多く進めるよう指示され、2日後、Aさんの疑似に同伴させてもらった。初日の硬かった表情ではなく、穏やかな表情で笑顔も見られた。実はマネキンを触ってすごく興奮して夜眠れなかったこと、疑似を重ねていくうちに気持ちが落ち着いてきたことを実習生の私たちにも話してくれた。実習中の数日でこれだけ患者さんの変化がみられるとは思わなかった。
また、条件反射制御法では書く作業が多くあるが、書き出しを患者さん達はどれほどやれるのだろうか、特に標的行動の描写文においては発達の問題がある患者さんにどう書かせることができるのかと思っていた。しかし、後に、知的障害を持つ性嗜好障害の患者さんへの想像の設定を見学した時に、研究補助員の方が患者さんに合わせて工夫して介入をしている事を目の当たりにして感動した。個別の柔軟な対応で、きちんと条件反射制御法を説明し、援助していくことで、発達の問題や知的障害を持つ人たちも治療作業を開始し、継続できるのだと感じた。
素晴らしい治療効果を上げているのは病棟で働く看護師の皆さんの働き、つまり、医師と看護師がトップダウンではなく、平井先生を中心に横並びのフラットな関係でのチームワークにおける各職員の働きによるところが大きいと思った。
また、実習研修生により多くのことが体験できるように実習指導の看護師をはじめ、またそれに協力するスタッフの皆さんのご尽力は本当に有り難く、頭が下がる思いだった。
この実地研修を受けて、勤務する病院、病棟で条件反射制御法を展開していくイメージが湧き、やれそうだ、どこから準備していこうかとワクワクする思いに変わった。
実習の翌週、職場へ行くと、ちょうど性嗜好障害で入院されてきた患者さんが、私が勤務する病棟にいらっしゃった。早速、この方への介入を、一緒に研修を受講した作業療法士の土屋と共に開始した。
一歩一歩、現場で条件反射制御法を実践していこうと思う。

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