∞メール No.23

 
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∞メールの全体は コチラ からダウンロードできます。
一部を抜粋したものを下に掲載しています。


会員の皆様
ご無沙汰しております。前回の∞メールが今年2月14日でした。
私の計画が不良であり、学会誌の編集等に時間をとられ、∞メールに手をつけられませんでした。申し訳ありません。
その間に新型コロナウイルス感染症の世界的大流行があり、多くの罹患者と死亡者が出て、社会のさまざまな活動に制限があります。
条件反射制御法学会にも影響がありました。
今年、研修会をこれまでよりも多く計画していました。しかし、高知、富山、宮崎、新潟での研修会は延期になり、日にちは決まっていません。札幌と鹿嶋(茨城県)での研修会は、参加人数を強く絞って、開催日を予定しました。
また、学術集会は危ぶまれておりましたが、オンライン(Zoom:ズーム)で理事会を開き、予定通り2020年9月26日に時間を短縮してオンライン開催することにいたしました。Zoomを使用した初めての試みですので、慎重に検討しながら、準備を進めて参ります。
ピンチはいつも必ずチャンスになると考えています。
皆様といっしょにこの状況を乗り越えていきたいと思います。

平井愼二

下総精神医療センターでのCRCT実地研修を受けて

患者様の反応が理解できるCRCT
-精神保健を学び直した5日間-

条岩田精神保健相談室
精神保健福祉士 岩田常明
(2019年9月26日寄稿)

令和元年9月9日から13日までの5日間下総精神医療センターにて、条件反射制御法の実地研修を受けさせていただきました。そこでの学びや感想を述べさせていただきます。
私は主に岐阜県や愛知県内で精神保健にかかわる医療福祉分野で勤務し、様々な方とお会いしてきました。
具体的には、元ホームレスの方や母子家庭の方、虐待被害や加害、DVの被害や加害、刑余者の方、身体・知的・精神障害の方々です。
その中の多くが、精神的な病状を呈していました。ご本人に治療意欲があり、精神科医療機関を受診しても、病状が改善しない方。例えば、リストカットをやめられない方や、窃盗を繰り返してやめられない方です。
それぞれにやめるべき理由があって、本人も止めないといけないと理解しているのに問題行動をどうしても止められない方です。
そういった方々に対して、自分なりに専門書を読み、医療職の方に相談し、関連の研修に出掛け、考えたプログラムを提供してきましたが、結局確固とした成果の出ない状況でした。
今回、ご縁があって条件反射制御法の実地研修を受講する機会をいただきました。
病院から実地研修前に予習テキストを送っていただき、自宅において学習できる時間もいただきました。初級の研修の内容を思い返しながら、学習していくなかで、前述の問題行動をどうしてもやめられない方には、第一信号系に問題があり影響がでていることがわかってきました。
そして、条件反射制御法は第一信号系に働きかける治療法であることもわかりました。
ホームレスの方や、母子家庭の方、虐待家庭の方などは、過去に過酷な体験をしている場合が多いので、ジャングルの小動物の脳のように、少しの刺激で第一信号系が過作動を起こしやすく、問題行動を起こしやすいことも想像がつきました。
実習一日目が始まると、担当の医療スタッフの方がマンツーマンでついていただき、オリエンテーションで病棟内の各部屋と疑似ステージの紹介をしていただけました。
パチンコ台やマネキン、商品箱、疑似物質の見学をしました。見学途中にパチンコ台とマネキン、覚せい剤の疑似をおこなっている所でしたので、部屋だけでなく実際に疑似をしている所も見学させていただきました。
いままで、問題行動をしたときの話は当事者から聞いたことがありましたが、実際にしているところを見たことが無かったので、刺激的でした。
誤投薬防止方策の説明で、反射的に医療行為をしてしまうことで、ヒューマンエラーが起きるので、わざと途中の手順をとばすという確認動作をわざと間違う疑似をして、エラー防止をしているなど、条件反射制御法の論理で治療以外にも活用していると伺い、応用の幅の広さを感じました。
二日目は、まずは、医療スタッフの方が患者さんに対してテストを予告し、後に採点して指導するところを見学し、次は私が別な患者さんに対してそれらを実施しました。
各治療作業の説明書の提供の後にテストを行う場面では、満点をとれるまでなんどでもテストするのは、大変なように思いましたが、採点時に問題の丁寧な解説をされる姿をみて、患者様にこれからの治療の目的や注意事項を理解していただくために必要なことだと理解しました。患者様も満点をとれるまで頑張りたいという意欲がみられました。
見事満点合格した際には、スタッフ全員で賛辞と拍手をおくり、患者様も誇らしげでした。
三日目は、外来での維持ステージの見学と初診の患者様の見学・テストをしました。
維持ステージの方は、今はにこやかにお話されていて、落ち着いている様子でした。
初診でいらした方は、他に問題行動を治療できる病院がなく、下総精神医療センターを頼りに訪ねてこられたようでした。それだけ、問題行動を根治できる条件反射制御法が世の中に求められているのだと思いました。また、これだけ治せる病院が無い中で、治療実績を上げ続けている下総精神医療センターはどんなに凄いのだろうと改めて思いました。
患者様もご家族様も真剣に解説書を読まれ、テストで満点を取るまで繰り返して、診察の後お帰りになられました。そのお姿は、まさに切実そのものでした。
四日目は、病棟カンファレンス参加や、疑似・想像の設定を見学しました。
カンファレンスの事前の患者様の情報収集では、刺激に対する反射症状の観察票で、治療開始初期には、体や精神に生じている変化が多かったのに、相当数の疑似や想像を繰り返していくと、それぞれのタイミングで反射症状が減っていき、反応がなくなり、動作の駆動もなくなっていくという、確実に治療効果が上がっていることがわかりました。
疑似の設定では、飲酒の標的行動に対して、冷蔵庫に冷やしてある空き缶をみんなで取りに行くところから実際に飲むふりをするところまで、手の込んだ演出でした。患者様は特に反応はありませんと仰いましたが、実習生の私に、唾液が出るなどの反応がありました。
想像の設定では、患者様の記憶がとても細かく残っていて、詳細に再現できることに驚きました。その位、反射連鎖の作動が強いのだと思いました。
二回目の中断の際に、「では、今日はここで中断して部屋に戻りましょう。」と伝えられた時の、標的行動を完遂できないことへの患者様の戸惑いの反応が印象的でした。
五日目は、想像の設定の実技や全体の質疑応答を行いました。
実技では、実際に患者様とのやり取りになると、見学していたときのイメージと違い難しい面もありました。そこで患者様をよく知る医療スタッフの方のフォローで上手にカバーしていただきました。患者様の事を普段から知っておき、信頼関係を築くことが、どんな治療でも有効なことを改めて知りました。
平井先生との質疑応答の時間には、第一信号系が過作動を起こし、第二信号系を圧迫して、倫理的な判断を口にしなかった患者様が、第一信号系がおさまってくると、被害者への詫びる言葉を口にした事例などを伺いました。ヒトの第二信号系である思考に、第一信号系の過剰な作動が影響してしまうということで、教育や刑罰だけでなく、治療という選択を要することがあるのだと思いました。
今後、私が出会う方々に生物の進化の話や、第一信号系・第二信号系のお話から始めて、条件反射制御法の実践を地域のどこかでできたら良いなと思います。
今回の実習を通じて、下総精神医療センターの皆様から非常に多く学びの場をいただきました。
平井先生はじめ、優秀な医療スタッフの皆様に改めてお礼を申し上げます。
千葉県未曾有の災害の中、患者様の治療に併せて、実習生のご指導にご尽力賜り、誠にありがとうございました。

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