∞メール No.41

∞メールの全体は コチラ からダウンロードできます。
一部を抜粋したものを下に掲載しています。

会員の皆様
夏真っ盛りです。皆様、いかがお過ごしでしょうか。

第11回学術集会が近づいております。その会のテーマは薬物乱用に対応する者の役割と連携です。

条件反射制御法と関係機関の連携は別のものだとお考えの方もいらっしゃると思います。実際に過去に条件反射制御法学会は、条件反射制御法の効果を向上させるために集まった会だったのです。しかし、その後に社会制度、つまり関係機関による連携のあり方も検討の焦点にすることを会則にも盛り込みました。なぜならば、条件反射制御法を用いている内に把握したヒトの本当の行動メカニズムが、覚醒剤を反復して使用した者による覚醒剤使用が実は犯罪であるとは言い切れないことを理論的に支持することに気づき、その後、制度の再構築をするべきであるという考えをもつようになったのです。

刑事司法体系が規定する犯罪の要件は、自由な意思での違法行為の実行、ならびに意思と行為に同時性があるという2つのものです。まずは、この規定の中の意思という言葉に問題があります。ヒトは反射で過去の生理的成功行動を再現する第一信号系と思考で未来に社会的成功行動を創造しようとする第二信号系で行動するのです。刑事司法体系の基盤理論は第一信号系を検討に入れていないので、犯罪を規定する言葉の中の意思はほとんど第二信号系の思考と同じです。

覚醒剤をやめられない人は、第二信号系は覚醒剤をやめようと考えているけれど、第一信号系が反射で覚醒剤摂取行動を再現するのです。だから、犯罪の要件を満たしません。では、覚醒剤をやればやるほど、犯罪者でなくなるという妙なことが起こりそうです。しかし、しっかりとヒトの本当の行動メカニズムに照らし合わせて考えると、覚醒剤をやる人は悪い人と感じるとおりに、理論的にも覚醒剤をやめないヒトは犯罪の部分をもつことになります。

学術集会では上の問題と解決の方向を示し、それに対して議論を展開します。

また、薬物乱用に囚われたヒトの回復を支える機関にはさまざまなものがあります。学術集会では、回復支援施設と精神科医療の連携についても検討します。

ここまで示したように欲求を消そうとして開発した条件反射制御法をさらに磨き上げようとする検討が、連携体系を検討することに展開したのです。これは不思議なことではないのです。条件反射制御法という技法も、連携体系という制度も対象はヒトだからです。

皆様、学術集会に参加して、一緒に検討して、お楽しみください。

平井愼二

CRCTを受けた方からの報告

覚醒剤を乱用する生活から立ち直れました。(その2)
- 自宅で覚醒剤使用の疑似をやれなんて、何を考えているんだ -

A.G.
(2022年6月8日寄稿)

入院して1か月が過ぎ、疑似のステージに入りました。久々の注射の動作を「懐かしい」と感じました。楽しかったです。

疑似の2回目に途中で疑似の動作を、平井先生の指示に従って中断したときには、偽物だとわかっているのに最後までやりたいと感じ、辛かったです。中断後、10秒ほどでおまじないをして、2秒から3秒ほどで楽になりました。続けたい気持ちがなくなりました。

またその後、体調に変化がありました。疑似の後、視界がいつもより明るく見え、体が重く頭が回らず、まるで切れ目(覚醒剤使用後の効果が薄れていく状態)の様でした。部屋に戻って一人でいるとき少し幻聴が聞こえそうでした。

上記の通り、疑似であるにも関わらず強い反応があり、その後、まるで本物を使用した後の様な体調になりました。疑似でも、覚醒剤で条件付けられた反射連鎖が強く動いて、脳は本物を摂取した時と同じ様な反応を示すのだと実感しました。

疑似を毎日20回程行い、累積が200回近くなると、ほとんど何も感じなくなっていました。今思えば、静脈注射での覚醒剤摂取に関しては、その疑似をしても、覚醒剤で条件付けられた反射連鎖はもう動かなくなり、ほぼ消えた状態になっていたのだと思います。

しかしその後、平井先生と相談して、新たにスニッフィング(鼻孔吸引)の疑似を開始したところ強い反応がありました。静脈注射の疑似では得られなかったほどの、まるで本物をやった時のような興奮と快感を覚えました。よく考えれば自分の覚醒剤使用歴の8割がスニッフィングでしたのでこれはスニッフィングで反応が出なくなるまで疑似をやらないとマズいと思いました。スニッフィングによる反射連鎖のドミノがまだ強固に残っていることを感じました。またスニッフィングは使用する道具が実際に使用する時とほぼ一緒なので反射連鎖が静脈注射より容易に刺激されるのかと感じました。

その後、想像のステージに入りました。朝に起き、朝食を食べて着替え、出社し仕事をして帰宅するという誰にでもある日常の行動に続いて、家で注射の準備をして覚醒剤を注射する行動を、目を閉じて頭の中で想起するものでした。疑似の反応はほぼ消失していたにもかかわらず、想像では緊張感やドキドキ、こわばり等が生じたため、日常の生活だと思っていた行動も覚醒剤摂取に直接繋がっているのだと感じました。

 想像の2回目に中断したときには続けたくて仕方ありませんでした。続けたい気持ちは疑似の中断時より強かったです。中断して想像の中で覚醒剤を捨てる様に指示されたので捨てたのですが、想像であるにも関わらず覚醒剤を捨てる事がもったいないと感じました。

覚醒剤を想像の中で捨てた後、10秒ほどで、おまじないをしたときには、地元から下総に帰ってきた様な感覚を感じ、非常に楽になりました。

想像によって、覚醒剤摂取に直接繋がっている日常生活の行動を司る反射のドミノを抑制しきったら、欲求は無くなると確信すると共に、おまじないが強力に作用するようになっている事を実感しました。

想像も毎日20回程行い、累積が200回近く行った頃には、既に何の反応も示さなくなっていました。疑似も全く反応がなくなっており、ついにすべての覚醒剤使用にいたる反射のドミノが消失したと感じました。

CRCTの効果を完全に得たと実感し、確信したのは退院の10日前頃に、覚醒剤を過去に使用していた自宅アパートに試験外泊を行った時です。実はその外泊を平井先生から提案されたときに、覚醒剤を使用していた自宅で覚醒剤使用の疑似をやれなんて、何を考えているんだと思いました。母もそれを聞いて驚き、下総になぜかを問い合わせをしました。しかし、その外泊を実施して、疑似も行い、少し前まで覚醒剤を使用していた場所であるのに全く欲求を感じませんでした。覚醒剤を買うときに使用したことのある車を見に行ったり、覚醒剤を買ったことのある場所にも行ったりしましたが、一切欲求が起こりませんでした。この外泊の結果、自分がCRCTで欲求を消失させることに成功したと確信しました。欲求自体が消失したことで何の葛藤も無くなり、心が非常に楽になりました。

認知行動療法では常に欲求と葛藤したり逃避したりしなければなりませんので、それは非常に辛いものだと思いますが、CRCTは最終的には「自由」で「生きやすい方向」へ向かうものだと感じました。

勿論、薬等を使うものではないですし、認知行動療法でいう特定の「トリガー」となりうる、時間、状況、物を避けなければならないものではないので、CRCTは副作用の極めて少ない治療法だと感じました。

また薬にハマっていた人間は「即効性があり、効果が強く実感できる」ものが好きです。睡眠薬で言えば多くの人がフルニトラゼパム(サイレース)にハマるのはフルニトラゼパムには即効性があり、効果が強いからです。そんな薬にハマっていた人間にとってCRCTは早い段階で効果を実感でき、その効果を強く感じる事ができる為、「向いている」と思いました。

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