∞メール No.40

∞メールの全体は コチラ からダウンロードできます。
一部を抜粋したものを下に掲載しています。

会員の皆様
いかがお過ごしでしょうか。

関東は梅雨明けが6月27日に気象台から発表されました。暑い夏になりました。日本中で気温が上がっています。健康に気を付けましょう。

過日、「大河への道」という映画を見ました。千葉県香取市が同市を盛り上げるために、実際にしたかどうかは把握していませんが、香取市と縁のある伊能忠敬をNHKの大河ドラマに取り上げさせようと企画し、展開させたという設定でした。その現代における展開が、見る者にはいつのまにか、200年前に佐原で伊能忠敬が中心となって作製した日本全土の実測地図「大日本沿海輿地全図」完成への展開に昇華するものでした。困難なことを少しずつ前に進める作業が、命をかけた作業とともに描かれていました。

伊能忠敬を中心とする者達の活動が、ヒトの本当の行動メカニズムを探求し、それに適った技法と社会制度を支える研究をするという条件反射制御法学会の活動に似ていると感じ、また、伊能忠敬旧館を私が何度も訪れたことがあるので身近に感じ、「大河への道」には強く勇気づけられたのでした。

さて、この号には私が主治医となった患者さんによる手記を掲載します。その方は治療の経過を詳細に書いてお送りくださったので、それを3部に分けて
皆さんにご覧いただきます。その一つめが今回のものです。

その方は、私の病棟に入院して条件反射制御法を受けた後、維持作業を続け、欲求を全く感じず、覚醒剤使用から長期に離れています。

平井愼二

CRCTを受けた方からの報告

覚醒剤を乱用する生活から立ち直れました。(その1)
- 逮捕から制御刺激まで -

A.G.
(2022年6月9日寄稿)

私は幻聴の「自首すれば刑が軽くなるぞ」という声をきっかけに110番通報を自らして、逮捕され、A県警N警察署に留置されました。逮捕5日目頃、会社の取締役が面会にやってきました。懲戒免職は間違いないと思っていたところ、これまでの会社への貢献を認められ、執行猶予が得られた際には復職させてもらえる事になりました。信じられない幸運な事でした。

前回の覚醒剤自己使用での逮捕から10年であり、「刑の一部執行猶予」という制度もでき、全部執行猶予を付与されるか微妙な状況だった為、知人のつてを使い、家族が私選弁護士を2名つけてくれました。

母が当時K病院にて条件反射制御法(以降、CRCT)をアルコール使用障害の患者に対して行っていた私の昔の主治医W医師に相談したところ、覚醒剤使用障害の治癒には下総精神医療センターに入院してCRCTを受ける事がベストであると言われ、弁護士に相談しました。その弁護士事務所で以前も下総に入院させた被告人がいたことから、下総に入院する段取りをスムーズにとる事が出来ました。

保釈金300万を家族が工面してくれ、起訴後、保釈を得てその足で下総に向かいました。私の覚醒剤使用はもはや病気であると思っていたので、治癒させてくれる病院が見つかりうれしかったです。

父に付き添ってもらい下総に着き、採血をした後、平井先生の問診がありました。平井先生との最初の出会いです。平井先生から「世界を一緒に変えよう」と言われ、先生の自信に「この先生についていけば治る」と思いました。

病院での生活は不安でしたが、担当の看護師さんが必死にフォローしてくれ、不安は無くなりました。他の患者も皆、入れ墨が入っていたりして最初は怖かったですが、徐々に慣れました。

先ずは入院してすぐCRCTに関するガイドブックを渡され、テストがあるので覚えるように言われました。ガイドブックを見て目から鱗が落ちました。人間には第一信号系と第二信号系があり、第一信号系にできた後天的な反射の連鎖の作動が覚醒剤の反復使用の原因であると知りました。覚醒剤の薬理作用で条件付けられた人の覚醒剤使用は、第一信号系が司るものであり、自由な思考によるものではないこと、また、覚醒剤使用を司る反射を抑制することが治療のメインだと知りました。理にかなっており、この治療法なら必ず治ると思いました。

テストは「意思」「反省」「後悔」といった語句の入った文章は誤りなので、消去法で簡単に合格しました。

その後、おまじない(制御刺激)の設定がありました。

私は覚醒剤の他に危険ドラッグを摂取する行動も条件付けられていた事もあった為、おまじないは(手を太ももの上に載せて)「私は今」(親指を立てて)「シャブとドラッグを」(手を握り締めて)「やれない」(手をもう一度握り締めて)「大丈夫」という内容になりました。

おまじないを設定し、覚醒剤を使用できない環境で覚醒剤を使用できないことを言葉にする事に不思議な感覚を覚えました。その後、しばらくは、不思議な感覚を毎回感じました。欲求を感じることが無かったので具体的な反応はありませんでした。動作が自分にとって不自然なものなので、なかなか慣れないなあと思いました。おまじないを200回近く行った頃には自然とおまじないができるようになり、不思議な感覚もなくなりました。

入院して1か月が経った頃、覚醒剤を使用した日の作文を書くことになりました。書いていると、また使いたい気持ち、ゾクゾクした気持ちになりました。しかし、おまじないの言葉を頭で思い浮かべると不思議な気分になり、覚醒剤を使いたいという気持ちが一気に吹っ飛びました。おまじないの効果を実感し、動作なしで言葉を頭の中で唱えるだけでもある程度欲求が消える効果を感じました。

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