第八回学術集会

2019年10月05日

大会長挨拶

 この度は条件反射制御法学会第八回学術集会の大会長を仰せつかりまして、大変栄誉であると共に、力不足ではないかと自問しているところです。
 まずは条件反射制御法(以下CRCTと記します)との出会いについて記したいと思いますが、そもそも私が精神科医を志したのは、覚醒剤やアルコールの使用障害治療に携わりたかったからです。医学生時代に、それらが精神科で扱われること、一方で、精神科医の多くは使用障害治療に消極的だと聞きました。翻って、私は昔からアウトサイダーやアウトローの人達への関心を強く持っており、使用障害治療には社会的な意義があることは勿論のこと、好奇心を満たす魅力を有しているように思えました。他の先生方が診たがらないという点も、私の天邪鬼な性格に合っていると感じました。
 念願通りこの世界に入りましたが、治療法は数十年前と大きくは変わっていない印象で、治療法の選択肢がないことを不思議に感じると共に、新しい治療法を見出せない自分の力不足を嘆いておりました。
 そのような時期、2008年末のことと記憶しておりますが現在の下総精神医療センターに、薬物使用障害に携わっている医師の一人としてお招き頂く機会を得ました。そこで、平井愼二先生より2006年にCRCTを開発し、臨床での効果を実感しているとのお話を伺いました。治療法の説明を聞きながら、この治療法はすごいと思いました。人間の行動を司る中枢を2つ(動物脳と人間脳)に分けて考えるという発想は私には新鮮であると同時に、これまでの臨床経験で感じていた疑問が氷解していく感覚を持ちました。従来治療では上位因子と考えられている欲求を、嗜癖行動に関わる条件反射の作動を理性が止めようとして生じる摩擦と捉える点は、欲求を自覚していない患者が容易に再発をする姿を何度も見てきた私には強い説得力を有していました。
 早速当時勤めていた精神科病院でアルコール使用障害に対してCRCTを導入したところ、院内での飲酒発見事例が劇的に減るなどの効果を認めました。2015年に現在の勤務先である共和病院へ赴任し、CRCTを用いたアルコール使用障害治療を始めました。病院がCRCTの治療チームを編制してくれたため、治療実施環境の整備は急ピッチに進み、2017年12月から性嗜好障害や病的窃盗(クレプトマニア)、病的賭博、ゲーム障害などを治療対象に追加し、高い治療効果を得ております。
 CRCT理論では、人間の行動を司る中枢は2つありますが、CRCTの治療ターゲットは主に動物脳です。認知行動療法をはじめとする従来治療が、人間脳への働きかけを主とするのとは大きな違いあると考えます。
 臨床経験上、2つの中枢の働きで人間の行動が決まることは正しいと考えますが、CRCT理論のメカニズムに対する研究は十分ではありません。これは吃緊の課題であり、これから多くの研究がなされることを願っております。さらに、CRCT理論の正しさが広まることで司法への影響が大きくなることを期待しています。多くの犯罪に対して、CRCT理論に基づく司法判断が行われれば、刑罰か治療かではない新しい判断が生まれるのではと期待しております。
 最後になりますが、可能性を無限に持ったCRCTの発展に微力ながら関われますことに喜びを感じると共に、ご参加の皆様方に新しい知見を多く届けられるべく有意義な学会にしたいと考えております。

条件反射制御法学会第八回学術集会
大会長 元 武俊(ウォン ムジュン)

テーマ


進化システムの過作動に対応する条件反射制御法


開催概要


【開催日】2019年10月5日(土)
【時 間】10:00~18:50
【会 場】ウインクあいち5F
【住 所】愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4-38
【残席数】まだ十分に余裕があります(2019年3月20日現在)

参加費


1.学術集会
会員と非会員で参加費が異なります。
非会員の方は、参加申込みに際して会員になるための手続ができます。
年会費5,000円を支払い、その他の手続を行って、会員になります。
その時点での最新号から学会誌をお送りします。 

★第一期申し込み(~9月20日正午申し込み分まで ※参加費振込〆切:9/27)
会員:4,000円 非会員:9,000円

★第二期申し込み(9月20日正午~10月4日正午まで)
会員:5,000円 非会員:10,000円
※第一期に申し込まれた方でも、9月27日(金)までにお振込みをされなかった方は第二期申込みと同様の扱いになります。
※第二期申込みの方の支払いは当日現金のみとなります。
※当日、会場が満席の場合は、申し込みフォームを送信されていた方の参加が優先されます。


2.懇親会
学術集会閉会の後に、懇親会を開催します。(参加費:5,000円)
懇親会に参加される方は、学術集会への参加申込み費用と振り込みと同時に懇親会費を振り込んでいただきます。

3.注意事項
各種参加費の支払方法は自動返信メールに記載があります。必ずご確認ください。
各種参加費は、一旦支払われた後は返却はいたしませんので、ご了承ください。
10:00開会式大会長挨拶元 武俊(共和病院医師)
10:10基調講演ヒトの中枢と条件反射制御法平井愼二(下総精神医療センター 医師)
10:40一般演題
第1座
2題座長:
中元総一郎(結のぞみ病院副院長)
11:40当事者体験
発表
12:00昼休み
理事会
13:00総会司会:
尾田真言(NPO法人アパリ事務局長)
13:10一般演題
第2座
4題座長:
長谷川直実(大通公園メンタルクリニック院長)
15:10休憩
15:30対談テーマ:
進化から考えるやめられない行動
司会:
元 武俊(共和病院医師)

登壇者:
後藤幸織 氏(京都大学霊長類研究所 准教授)
平井愼二(下総精神医療センター 医師)
17:00教育講演演題:
ヒトの行動と刑罰
司会:
飯野海彦(北海学園大学法学部 教授)

講師:
松宮孝明 氏(立命館大学法務研究科教授)
18:00閉会式
18:30懇親会

会員の皆様から、条件反射制御法の実践や理論、あるいは信号系学説に基づいた社会制度のあり方についての自由報告を募集します。

●申込み期限:2019年6月30日まで ※申込み期間は終了しました。
●報告者資格:報告者は、会員に限ります。
●報告時間: 1件 30分以内(報告時間:20分程度、質疑応答:10分程度)
●抄録:下記ダウンロードボタンより様式を取得してください。

※抄録には題、所属施設、氏名、本文(1600字程度)を記載していただきます。

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