∞メール No.12

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一部を抜粋したものを下に掲載しています。


会員の皆様
お元気でしょうか。皆様の周囲に変化が起きつつある時期です。定年を迎える方、異動を告げられた方、ご家族が卒業された方、ご家族が進学する方、あるいは希望が叶えられなかった方、さまざまな方がいらっしゃることでしょう。
いろいろなことが起こるのが人生です。楽しんで、あるいは乗り越えて、前に進みましょう。
∞メールNo.12をお送りします。

CRCTを受けた方からの報告

欲求がなくなりました。

N.I.
(2019年2月6日寄稿)

 私が条件反射制御法と出会ったのは2016年10月でした。

 私自身、4年間覚醒剤を使用し続け、その間に結婚をして、子供が生まれても欲求し続け、使用を続けていました。

 ある日、妻に覚醒剤を見つけられ、これまで覚醒剤を使用していた事を知られ、家族、親族に多大な迷惑をかけてしまいました。
 
 妻の支援を受け、初めは保健所へ相談をしに行きました。保健所でのカウンセリングで、病院での治療を勧められました。

 いくつかの病院を教えていただき、大阪にある虹クリニックに診察してもらう事にしました。

 虹クリニックで担当していただいた中元先生から教えていただいた治療方法が現在も続けている、条件反射制御法でした。

 始めはおまじないをするといった事で、1日20回以上するとの事で、続けていきました。最初の感想は本当にこの治療で依存症を治すことができるのかというのが本心でした。

 1週間に一度虹クリニックへカウンセリングに行き、検査をしていく通院でした。カウンセリングをしていだくことで薬物依存と向き合う事ができました。

 その頃に、携帯電話から覚醒剤を買っていた友人の番号を消しただけで、大阪にいては友人と完全に断ち切る事が出来ないので、妻の出身の土地へ引っ越す事を決めました。

 引越しの事を中元先生へ相談させてもらった時に紹介状を書いていただいた病院が下総精神医療センターでした。

 下総精神医療センターへ初めて外来へ行った時に初めて平井先生と出会いました。平井先生との診察で一度入院してしっかりと治療をしませんかと言っていただき、1か月間の入院を決めました。

 入院当日はとても不安にもなりましたが、平井先生や看護師の皆さんが寄り添っていただき、相談もとてもしやすい環境を作ってくださり、治療に集中できました。

 入院してから条件反射制御法の効果や、どのようにして治療をしていくのかを勉強しました。

 入院時に麻薬取締官の方を紹介していただき、覚醒剤の欲求に対するストッパーにもなりました。

 麻薬取締官の方にも感謝しました。

 自分自身の精神論だけではこの薬物依存を治す事は出来ない事を知り、改めて自分がしてきてしまった事を後悔しました。

 治療プログラムをスタートして、入院の1ヶ月間は制御刺激、疑似、想像と教えていただいた治療方法をさせていただきました。そして入院時に麻薬取締官の方を紹介していただき、覚醒剤の欲求に対するストッパーにもなりました。

 退院後も定期的に連絡を取り、現状をお話しできる環境もできました。

 治療を続けていくとどんどん欲求もなくなり、条件反射制御法の効果を自分自身体感しました。

 条件反射制御法の効果を持続するためには、維持ステージといった、退院後も続けて行うことで自分自身の脳にインプットした事を維持できるとの事で、やめてしまうと今までやってきた事が台無しになるとの事でした。

 人間の脳は自分の意思ではどうにもならない部分があると改めて知り、私自身治療に真摯に向き合い続けていくと誓いました。
退院から今まで毎週1回尿検査をして、結果を平井先生へ送るといった事で、平井先生と常に繋がっていられる事も自分の治療の継続にも繋がっています。

 これからも維持ステージの治療を続け、平井先生とも密に連絡を取り、覚醒剤使用していた自分を反省して、治療を続けていきたいと思っています。

 薬物依存で苦しんでいる人達がこの日本だけでもたくさんいると思いますが、この条件反射制御法を知って、一人でも多く薬物依存から脱却できればいいと感じております。

解説

寄稿して下さったI氏の主治医は平井愼二(下総精神医療センター)であり、現在も主治医として対応しているので、I氏の体験記の一部について平井が次のように解説する。
■入院期間について
下総精神医療センター専門病棟の現在の入院プログラムは、制御刺激、良かったことの書き出し、問題行動の描写文、疑似、辛かったことの書き出し、想像、体験の読み返しと20単語の書き出し、描写文の読み返し、集中内観が組み込まれており、無意識的行動を司る第一信号系と意識的行動を司る第二信号系の両方が環境からの刺激に良好に反応するように約3か月で設定しなおすものである。
そのような基本的なプログラムを外れ、I氏に対しては1か月の入院を予定して、開始した。I氏は極めてまじめに条件反射制御法に取り組み、治療は予定どおりに進み、退院して、家族のもとに帰った。このように入院治療の期間を1か月にすることは滅多にない。I氏に対して、通常から外れた対応をした理由は次のようである。
体験記中にあるようにI氏は下総精神医療センターに受診する前に、すでに大阪で中元総一郎医師(結のぞみ病院)により指導を受け、制御刺激を開始しており、開始後2週間を経たころから制御刺激をすると胸が爽快になる感覚が生じていた。また、妻が治療に協力的であり、尿検査も家庭内で実施し、綿密な観察が期待できた。さらに、覚醒剤を乱用していない時期が3か月ほど続いていた。これらのことに加え、患者が就労を続けており、その能力は問題なく保たれており、思考は正常であり、反復する逸脱行動が生じるメカニズムに関する理解が良好であった。
そのような良好な要素が揃い、しかし、家庭の事情等から長期の入院が無理であったために、入院治療に費やせる期間に関して検討を重ねた後に、入院治療の期間を1か月にして疑似と想像を予定し、その予定どおりに入院治療を行ったのである。
今後、信号系学説が精神医学や心理学の領域で普及し、一般的な知識になり、精神科の外来や心理士による相談において条件反射制御法がなされるようになれば、反復する逸脱行動が生じる病態が重篤であるケースに対しては、社会内対応において制御刺激が指導され、反復され、その後に安全に疑似と想像ができる入院が用いられるケースが増え、3か月よりは短い入院期間で条件反射制御法を受ける者が増えるであろう。それでも1か月という入院期間が通常のものになるかと言えば、I氏のように一部の特殊なケースに限られる。この解説の冒頭にあるように入院プログラムは標的の行動を司る反射連鎖を抑制する治療作業が満載されている。
■意思という言葉について
意思という言葉は一般的に使われている言葉であり、通常の会話において使われることは問題の少ないものであろう。しかし、専門家は、意思という言葉を、治療技法に関する議論や裁判の判定における検討に用いてはならない。現実の裁判においては、同一違法行為の反復に関しても、それらが意思により生じているという誤解があるので、刑務所に服役させ、出所後に再犯を犯すケースが後を絶たない。
意思という言葉が意味する本質は、未来の行動に関する現在の準備状態を指すものであろう。未来の行動を決める現在の準備状態は、第一信号系と第二信号系の両方にあり、2つの信号系が協調すれば両方の信号系が共通に準備した未来の行動が生じるのであり、2つの信号系が摩擦する場合は強い側の信号系の準備した未来の行動が生じるのである。従って、例えば覚醒剤摂取行動に関して、その行動を司る第一信号系反射連鎖の作動性が第二信号系反射網の抑制より強ければ、覚醒剤をやめることに決めたという第二信号系の決意どおりには未来の行動は進まず、第一信号系の準備状態のとおり覚醒剤摂取行動が生じる。
■退院後の受診頻度と観察について
I氏は毎週水曜日に自宅で尿検査を行い、ラインで平井に送付する。また、毎月1日に、前月の作業回数累積票の写真と累積回数を送ってくる。このラインを用いた観察により、治療作業の継続が保たれる方向に作用するので、1氏は現在半年に1度の受診頻度で安定している。
■依存という言葉について
多くの者が依存という言葉で逸脱した行動を反復する病態を呼んでいる。依存という言葉は、本来は、抑制系物質の連続摂取により、その物質あるいは代謝物が血中に常にあることにより生じた神経接合部において反応性が変化した状態を指す言葉である。特定の物質あるいは行動に対する欲求あるいは衝動は、科学的には、依存と呼ばないことが正しい。詳細は、∞メールNo.5に示されている。

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