∞メール No.1

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一部を抜粋したものを下に掲載しています。

師走もおし迫って今年もあとわずかになりました。
会員の皆様におかれましては、益々ご活躍のことと思います。

1.平成24年の活動報告

2月17日 条件反射制御法研究会発足
2月18日 条件反射制御法第1回札幌研修会開催
6月15日 条件反射制御法第1回関西研修会
7月28日 第1回条件反射制御法研究会 於品川
9月29日 北海道で更生と再犯防止を考える会臨時研修会
12月21日 第1回薬物自己使用等事犯者弁護研修会 於中央大学

2.条件反射に関する用語の定義について

当初、パヴロフが使った言葉は、彼自身による研究が発展したために、見直す必要を彼が感じていたのではないかと考えられるものがあります。また、パヴロフが条件反射について研究を開始して1 世紀を超えており、これまでに他の研究者による様々な解釈や考え方が加わり、誤解を招く表現でパヴロフ学説が紹介されることが少なくありません。条件反射制御法を開発した平井も、当初は、パヴロフ学説を理解する際に誤った言葉にであい、しばらくそれらを使っていたことがあります。
それらを意識して、動物の行動を理解し、説明するために適正な言葉を使う努力を続けており、現時点では、次のような言葉を用いて動物の行動のメカニズムを理解しています。

1)反射と生理的報酬

① 無条件反射
動物は自らの生命を一定期間、保ち、子孫を残す行動を世代を交代しながらこれまで続けており、それに成功している生物種が現存するものである。その現象において動物は種々の行動をとり、ヒトを除く動物においてはどのような行動も防御、摂食、生殖を支え、あるいはそれらに繋がっている。それらの生命を保つ行動は、一部は本能行動とも呼ばれ、ある生物種に固有の特殊に見えるものが焦点を当てられ、紹介されることがある。しかし、生命を保つ行動は、移動の仕方あるいは摂食の仕方などの、その個体に生まれつき備わった彼らの日常の行動であり、生物種毎に決定されているが近縁の生物種とは類似しているものであり、生命活動の基本的なものを含めて考えるべきである。
生まれつき備わった行動は、生まれた後の環境に容易に左右されるものではなく、個体を自然の環境と異なるところに置いた場合に明らかになることがある。ある生物種に関して自然の環境の中で生じる特定の行動の始まりにある刺激をその生物種の個体に与えると、防御や摂食の対象がなくても、あたかもそれがあるかのようにその生物種に受け継がれてきた特定の行動をその個体がとることがある。これはその行動が生まれつきのものであり、その個体が誕生した後に消去されず、強固に保持されていることを示す。
防御、摂食、生殖につながる生まれつきの行動はそれほどに変化し難いものであり、そのような反射を司る神経活動の設定が遺伝子に組み込まれている。条件付けしなくても反射として作動するためか、そのような反射を無条件反射とパヴロフは呼び、1903 年に報告した。
② 生理的報酬
ヒトを除く動物に生じる神経活動は最終的には防御、摂食、生殖に繋がる。これらの三つの行動は、個体を一定期間保ち、子孫を残し、その個体が属する生物種が存続するため重要な行動である。個体がそれらの行動に成功した際に獲得するのが、生理的報酬である。
生理的報酬の効果はそれを獲得する前に生じた神経活動を再現しやすい形で定着させるものである。ヒトにおいても防御、摂食、生殖に成功した際に、生理的報酬を獲得し、その際に感じるものは安堵、満足、快感である。ここで注意しなければならないことは、それらは同時に生じることが多いが、安堵、満足、快感は生理的報酬ではないことである。決して、生物種を存続させるために頑張ったので安堵や満足、快感を褒美としてもらったというものではない。
③ 条件反射
動物は誕生の後に、生まれもった神経活動を用いて周囲からの刺激に対応する。それらの刺激のうち、無条件反射の機能だけでは円滑には対応できないものがある。
それらの新たな刺激に対して、動物が偶発的に複数の神経活動を連続的に作動させ、なんらかの行動をつくって対応し、しかし、防御、摂食、生殖のいずれにも成功しない場合は、生理的報酬を獲得しない。この場合、対応に用いた偶発的な複数の神経活動の連続は、生理的報酬がないのでその個体の神経活動の中枢に定着しない。
一方、それらの新たな刺激に対して、動物が偶発的に複数の神経活動を連続的に作動させ、なんらかの行動をつくって効果的に対応すれば、防御、摂食、生殖のいずれかに成功し、生理的報酬を獲得する。この場合、対応に用いた偶発的な複数の神経活動の連続は、生理的報酬によりその個体の神経活動の中枢に定着する方向に進む。つまり、それらの新たに定着する神経活動の連続は、同じ刺激を受けた場合に同じ反応を起こす条件反射である。
この定着の仕方は、生理的報酬の強度に従って、一度の体験で後に容易に生じる形で設定される神経活動もあれば、反復により後に生じる形で設定される神経活動がある。

2)信号系

① 第一信号系
体内外からの特定の刺激が、反射の中枢での処理において、必ず対応する特定の信号となって神経活動が進む系がある。刺激と信号の関係は1対1であり、刺激が入れば神経活動は定型的かつ自動的に進む。この神経活動が作動する系をパヴロフは第一信号系と呼んだ。この系の活動は自動的に進むので無意識的であり、ヒトを含む動物がこの系をもつ。
② 第二信号系
ヒトは現実の事象を表現する言葉をもち、言葉が刺激となって展開する思考という神経活動があり、この系を第二信号系とパヴロフは呼んだ。
ⅰ) 第二信号系のメカニズム
一つの言葉が表す事象は具体的な詳細を不明確なままにすることが少なくなく、また、一つの言葉が表す事象がつながる事象は一つに限らず、多様な事象につながる可能性がある。つまり、一つの言葉をヒトが聞いたとき、脳内で生じる信号は不明なところを残したまま複数の方向に向かう可能性のあるものである。従って、ヒトによる言葉を刺激とする思考という神経活動においては、刺激と信号の関係は1対多である。
例えば、「病院」という一つの言葉をヒトが聞くと、その「病院」は大きいか小さいか、何かを診療するのか、救急に対応するかしないか、検査機器は充実しているか否かなどは不明でありながらも、「病院」として思考を進めることができる。また、「病院」が建つのか、つぶれるのか、「病院」へ行きたいのか、行くべきなのか、連れて行かれるのか、「病院」を探すのか、見てみたいのか、訴えたいのか、「病院」で検査するのか、入院するのか、生まれるのか、死ぬのか、などいろいろな事象に繋がる可能性がある。
現実においては一つの言葉の前後には他の言葉等からの刺激がある。その流れの中で一つの言葉の刺激から生じる複数の信号は、他の言葉等からの刺激により収束と拡散のように表現できる現象が生じる。
信号の収束においては、一つの言葉を聞いたときに生じた信号に他の言葉等からの刺激がフィルターのように作用し、いくつかの信号が切り捨てられ、他のいくつかが残される。例えば「病院」の後に「医師が1 人、看護師が3 人で診療に当たっている・・」が入れば、病院の規模が示され、つながる事象が限られてくる。信号の拡散においては、一つの言葉から生じた信号に加え、他の新たな言葉等が多くの多様な信号を出すものであれば、一つの言葉で表された事象に基づきながらも生じる信号はより多様になる。例えば、「病院」の後に「そこに刑事が現れて、1 人の患者について問い合わせがあり・・・」などと言葉が続くと、つながる事象の可能性は一気に広がる。
このように思考は、複数の信号になりえる言葉という刺激が続出するものであり、神経活動は網状に絡み合って、収束と拡散を繰り返しながら展開すると理解すべきである。
ⅱ) 第二信号系の機能
第二信号系は評価、予測、計画、決断、実行を行う思考であり、これをもつ動物はヒトのみである。ヒト以外の動物はこの第二信号系をもたず、第一信号系のみで行動する。
この第二信号系の神経活動は、複数の刺激が網状に絡まって展開するので方向は自由であり、ヒトはこれを意識して主体的に行うことができる。

3)神経活動の3分類と自由度

神経活動は全て反射を構成するものであり、反射の連続で行動が成立する。それらは環境からの刺激に対して脳内で生じる信号が単純か多様かという差異、並びに進化に対する関与の仕方からこの項に示すように3つに分けることが適切であろう。
ここで示す考え方はパヴロフ学説に従うものであるが、先天的反射連鎖、後天的反射連鎖、第二信号系反射網(思考)の3つの名称は条件反射制御法を開発した平井がそれぞれの特性を示すようにつけたものである。
パヴロフは、当初、条件反射と無条件反射の言葉を使って研究を進め、報告を重ねた。後にパヴロフは自分の学説を進化と結びつけて体系的なものとした。その時点で、パヴロフは無条件反射を、その言葉から、生まれる前に条件付けられた反射という意味を示す言葉に変えたかったはずであると、平井は考えるのである。また、パヴロフは、行動は反射の連続で成立すると把握していたことから、平井は定型的な行動を司る2種類の神経活動には1本の反射の連続を想起させる「連鎖」を末尾につけ、自由な行動を司る神経活動には蜘蛛の巣のように広がる神経経路を想起させる「網」を末尾につけた。さらに、一般的な言葉でない「第二信号系」を一つの名称の一部に残したのは、そうすることで、ここに示す分類がパヴロフの考え方に基づくことを示し、それらの特性を明確にすることを狙ったのである。
① 先天的反射連鎖
本能行動は先天的に動物に備わっており、防御、摂食、生殖に成功する方向に向かうものであり、先天的な反射である無条件反射が1本の連鎖となってこの行動の本流を司る。また、これは第一信号系で作動する。先天的反射連鎖は、生物種において定型的であり、ヒトを含む全ての動物がもつ。
② 後天的反射連鎖
動物は防御、摂食、生殖を生後の環境で反復し、新たな行動を反復するようになる。この行動を完了して防御、摂食、生殖に成功したので生理的報酬を獲得して新たな反射が定着したのである。つまり、生後の環境に応じて成立した後天的な反射が1本の連鎖となってその行動の本流を司るのであり、その反射連鎖を後天的反射連鎖とした。また、これも第一信号系で作動する。後天的反射連鎖は、生後の環境に基づくので、その個体において定型的であり、ヒトを含む全ての動物が獲得する。
③ 第二信号系反射網(思考)
思考は、言葉を刺激として神経活動が作動するものであり、第二信号系内で多くの信号がかかわり、神経活動の経路は複雑に絡み合った網のようにものである。この神経活動はヒトのみがもち、他の動物はこれをもたない。この神経活動を第二信号系反射網と呼ぶ。この神経活動は収束と展開を重ねて作動し、かなりの程度に自由である。

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