∞メール No.15

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会員の皆様
大型連休はしっかり遊びましたか。
気持ちを新たに、あるいは今までのものを強化できたでしょうか。
さらにあるいは、まだ、お休みの気持ちのままでしょうか。
とにかく頑張りましょう。

条件反射制御法を新たに始めた会員からの報告

反復する行動で悩む方の治療可能性を増やすために

下総精神医療センター
医師 古川 優樹
(2019 年4 月29 日寄稿)

 この度、平成31 年度より下総精神医療センターに入職した古川と申します。

 この報告では、私がやってきた事、その上で条件反射制御法と出会い、入職に至り、現在数週間ではありますが、現時点で感じている事をお伝えします。

 以前、私はアルコール、薬物、ギャンブルの反復する行動を取り扱う専門機関に就労していました。そこは、私にとって反復する行動で悩む方を初めて網羅的に診させていただく機関で、身体的治療、教育、自助グループとの連携、家族へ
のサポートの大切を学ばせて頂きました。

 その専門機関で行なっている事は、アルコールを例に挙げると、「抗酒薬」「定期通院」「自助グループ」の3つの柱を用いて断酒を継続していく事を中心に行なっています。断酒を継続するためには、「飲酒するような機会・状況から避ける。」事が第一とされており、入院治療については、アルコールに関する知識の提供や集団認知行動療法行い再飲酒を抑えるという方法を行なっています。

 私はそこで、アルコール、覚せい剤の使用障害者に対する集団認知行動療法のグループの進行役になりました。そのグループを進行させる中で私が感じた事は、参加者が「優等生な答えさえすれば治療者は満足するであろう。」という感覚であり、この考えを僅かでも「自分自身の問題解決策の糸口を見つけられた。」と感じられるようなグループ運営にしていきたいと考え「集団動機付け面接法」と
いうものに注力するようになりました。

 この時に、私が注力する原動力となったものは、目の前で出会う使用障害の方だけでも、再使用をどうにか杭止められないのかという思いが診療を通して強くなってきた事と、この頃に自助グループの役員を務める方の再使用を目の当たりにし、「まさか、あの『3本柱』を地で行くような方が。」という衝撃を受け「それ以外の方法も模索しなくてはいけない。」と考え始めたからです。

 「欲求は治らないものだから、避けていくしかない。」という使用障害の治療前提があり、その上で、どのように長期的に、動機を保ちながら治療に取り組んでもらえるかといった方法が多い中、条件反射制御法という、「欲求そのものを取り扱う。」これまでの治療前提の外にある治療に出会いました。パブロフの理論を用いて、疑似を使い、欲求をなくす。このやり方を詳しく知るために研修会
に出向きました。終了時には「理解はできる。素晴らしい事だが、本当にそれが可能なのか。」と疑心暗鬼になっていたのが最初に感じた感想でした。

 その後、就労していた施設で、これまでと同様の診察をしていく中で、新たな壁がある事に気付きました。集団認知行動療法が広く提供されているのは、アルコール、薬物、ギャンブルなのですが、もちろん、専門機関で診療をしていると
窃盗癖、性嗜好障害といった方も来院されます。
正直に書くと、窃盗癖、性嗜好障害の方に私がやっていたのは、定期通院で顔を見せてもらう、自助グループにつなげる事といった程度しか提供できず、他の障害の方と比べ、再犯になってしまったり、治療中断に至ったりする事が多く、このことに大きく悩みました。

 解決の糸口が見つからないまま時間が過ぎていたところ、昨年の夏頃であった気がしますが、偶然、平井先生が地元で講義をされるというので、再び参加しました。再度、聞いてみた時に気づいたのですが、条件反射制御法は、疑似の設定ができるものであれば、全ての方に提供する事ができます。また、この治療は「欲求をなくす」という治療行為の目的が明確で、欲求がどの程度収まっているのか
を当事者自身が入院中に実感できるという利点があります。

 この方法があらゆる使用障害、嗜癖への治療の要になるのではと考え、私は思い切って先生の元で勉強させていただく事を決心しました。

 現在、この文章を書いている時点では入職して数週間になります。

 まず、驚いたのは疑似への当事者たちの反応です。薬物疑似摂取の初回に立会いましたが、本人は疑似であることを十分に知っているにも関わらず、覚醒剤の疑似パケットを少しもこぼさない様に丁寧に扱います。そして、気持ち良さそうに吸い「気持ちいいですね。」と嬉しそうに答えるのです。私は、こんなにも疑似に対する反応がでるのかと驚き、集団認知行動療法でいうところの「避けるべきもの」に出会わせてしまった様な、禁忌を犯しているような感覚に捉われました。

 しかし、疑似が50 回程度、進んだ頃に再度、反応を聞くと「だいぶ落ち着いてきました。」と答えるのです。窃盗の方の疑似にも同伴させていただきましたが、やはり同様に、当初の疑似で生じる反応と比べ、後には「喉のすぼむような緊張感がなくなった」と反応の低下を認めていました。

 次に驚いたのは、入院治療を受けた後、外来通院している方でした。窃盗の方では、「入院治療当初は、疑似でも欲求が出て辛かったけれど、今は、監視カメラも気にせず買い物できて楽しいです。」と答えており、自身の問題となる対象に対して「避ける」事なく生活できる喜びを実感されており、治療前との明確な変化を感じられる治療法なのだと実感させられています。

 私もできるだけ多くの方に条件反射制御法を提供していけるよう邁進してまいりますのでよろしくお願い致します。

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